知財関連 重要判決集(5)


「土地宝典」事件
出版差止等請求事件(かえでの木事件)
損害賠償請求事件(モンタージュ写真事件)最判
商品写真の著作権
損害賠償請求事件(「豆腐屋」の浮世絵事件)
書籍所有権侵害禁止請求事件最判
書籍『激数占い』事件
著作権侵害差止請求事件(映画のDVD事件)
損害賠償請求事件(交通安全標語事件)
損害賠償等請求事件(3Dソフトウエア事件)
「聖教グラフ」写真の著作権侵害事件
デンバー総領事写真事件
「照明器具の宣伝広告用カタログ」事件
ゼットベースボールカタログ事件

審決取消請求事件(包装用容器の意匠)
審決取消請求事件(意匠法3条1項と3条2項)最判
審決取消請求事件(参考図に基づく分割出願)
部分意匠の類否判断
「ビールピッチャー」審決取消請求事件
「腕時計側」審決取消事件
謝罪広告等請求控訴事件(ゴルフ用ボールマーカー事件)
カーテンランナー意匠権侵害差止等請求事件
「衣料用ハンガー」事件
「減速機付きモーター」意匠権侵害差止等請求事件
「簡易顕微鏡」特許権及び意匠権侵害事件
「短靴」審決取消請求事件



「土地宝典」事件

事件番号  平成20年(ネ)第10031号
事件名  損害賠償請求控訴事件
裁判年月日  平成20年09月30日
裁判所名  知的財産高等裁判所 
判決データ:  CP-H20-ne-10031.pdf

 一方、このような公的申請の添付資料や物件調査資料としても使われるという本件土地宝典の性質上、貸出しを受けた第三者がこれを謄写することは十分想定されるのみならず、閲覧複写書類の紛失又は改ざん防止の見地から、コインコピー機は法務局が直接管理監督している場所に設置されているものであるから、各法務局は、本件土地宝典が貸し出された後に複写されているという事情については、十分に把握していたはずである。また、民事法務協会がコインコピー機を設置しているとはいえ、同協会は法務省所管の財団法人であって、被告が同協会に対し法務局内のコインコピー機設置場所の使用許可を与えており、かつ、実際にコインコピー機設置場所の管理監督をしているのは、上記のとおり、各法務局である。
 そうすると、前記認定したとおり、本件土地宝典が作成された動機、本件土地宝典が公図等を原図として作成された経緯、法務局に備え置かれるに至った経緯、公的申請に当たって本件土地宝典の写しの添付が義務づけられることがあるという実情、第三者が法務局から本件土地宝典の貸出しを受ける目的が本件土地宝典の一部を複写することにある等の諸般の事情を総合すると、被告(法務局)において、第三者による違法複製がされないよう、あらかじめ、著作権者から包括的な許諾を受ける等の措置を講じるとか、第三者において著作権者からの許諾を得るための簡易かつ便宜な方法を構築するなどの相応の対応を図るべきであったといえる。また、被告がそのような包括的な許諾や簡便な方法を構築しなかった場合においても、少なくとも、本件土地宝典を第三者に貸し出すに先立ち、第三者が複製をする意図があるか否かの意思確認をし、複製をする意思があるときには、複製しようとする部分が、著作権の効力の及ぶ部分であるか否かを確かめ、著作権の効力の及ぶ部分である場合には、複製がされないよう注意を喚起するなど、違法複製を抑止する何らかの対応を図る作為義務があったといえる。そして、そのような何らかの具体的な措置を講じた場合には、注意義務に違反せず、過失はないものと解される。
 そこで、上記の観点から、注意義務違反の有無を検討する。
 本件全証拠によれば、被告において、著作権者に対して、包括的な許諾を得たり、本件土地宝典を利用するための簡便な方法を構築するための努力をした形跡はないのみならず、各法務局において、本件土地宝典を第三者に貸し出すに当たって、貸出しを受けた第三者が、違法な複製行為をしないよう注意を喚起するなどの適宜の措置を講じたと評価できるような具体的な事実もなく、漫然と本件土地宝典を貸し出し、不特定多数の者の複製行為を継続させていたといえる。そうすると、適宜の措置を講じたと評価できるような事情が認められない本件においては、被告は、貸出しを受けた第三者のした本件土地宝典の無断複製行為を幇助した点について、少なくとも過失があるといえるから、民法719条2項所定の共同不法行為責任を免れない。

(中略)

 以上のとおり、被告は、本件土地宝典を自ら複製したわけではないが、@自己の管理監督する建物内の場所に、民事法務協会に対してコインコピー機を設置使用する許可を与え、また、A民事法務協会が不特定多数の第三者に本件土地宝典を貸し出し、本件土地宝典の貸出しを受けた者が違法な複製行為をすることを禁止するための適切な措置を執らなかったのであり、上記の各作為、不作為に過失があると評価されるべきであることは前記のとおりであるから、被告は、土地宝典の貸出しを受けて複製をした者及び民事法務協会と共に、民法719条2項所定の共同不法行為者として、原告らに生じた損害を賠償する義務を負う。
 この点について、原告らは、被告が、著作権の侵害主体と評価されるべきである旨主張するが、被告に複製権侵害に関して民法719条の規定により損害賠償責任が認められる以上、この点についての判断を要するものではない。

(中略)

 被告は、Iは、本件土地宝典の複製行為がされていることを知った後もあえて寄贈を続けていたものであるから、本件土地宝典の複製行為について黙示に許諾していたと主張する。
 しかし、仮に被告が主張するように、Iが寄贈を継続したとの事実があったとしても、本件土地宝典の奥付の「不許複製」の表示は、正に許諾のない複製を禁じるものにほかならず、このことは同表示が当初から印刷された不動文字であったとしても、何ら変わるものではないから、かかる明示的な意思表示に反して、Iが包括的な許諾をしたと認めることはできない。

(中略)

9 争点10(不当利得の成否)について
 原告らは、@民事法務協会に対する法務局内におけるコピー機設置場所の提供行為、及びA本件土地宝典の貸出行為により、被告が不当な利益を得ていると主張する。
 しかし、原告らの主張は、以下のとおり理由がない。
 すなわち、民法703条は、法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う旨を規定する。
 ところで、コインコピー機を設置したのは、民事法務協会であり、本件土地宝典を複製したのは、不特定多数の第三者であり、そのいずれの行為についても、被告自らが行ったものではない。被告は、民事法務協会からコインコピー機の設置使用料を得ているが、当該使用料は、国有財産(建物の一部)を占有させたことによる対価の性質を有するものであって、使用許可を受けた民事法務協会が、コインコピー機を設置し、不特定多数の第三者に本件土地宝典の複製をさせることによって受けるコピー代金に関連して得たものではない(乙20)。また、民事法務協会が不特定多数の第三者に本件土地宝典の複製をさせることによって受けるコピー代金は、当該第三者によるコピー機の使用の対価であり、その金額は複写に要したコピー用紙の数量により定まるものであって、当該第三者が本件著作権の使用料を支払ったか否か、あるいは、そもそも複写の対象が本件土地宝典であったか否かによって、左右されるものではないから、そもそも民事法務協会についても、本件土地宝典の複製行為によって、民法703条所定の「利益」を得たということはできない。
 そうすると、被告が本件土地宝典の複製行為によって、民法703条所定の「利益」を得たと解する余地はない。
 この点について、原告らは、被告には、その行為を合法化するために必要な支出を免れた利得があるなどと主張するが、失当である。
 不法行為の制度は、加害者が被害者に対して、被害者の受けた被害を金銭賠償によって回復させる制度であるのに対して、不当利得の制度は、法律上の原因がないにもかかわらず、一方が損失を受け、他方がその損失と因果関係を有する利益を有する場合に、衡平の観点から、その点の調整を図る制度であって、それぞれの制度の趣旨は異なる。不当利得が成立するか否かは、あくまでも、損失と因果関係を有する利益を得ているか否かという、不法行為とは別個の観点から吟味すべきであることはいうまでもない。原告らの主張によれば、不法行為が成立する場合は、常に、加害者が利益を得ている結果となり不合理である。
 以上のとおり、不特定多数の第三者のする本件土地宝典を複製した行為が、不法な行為であり、かつその行為により利益を得ていると評価される場合に、当該行為が、不法行為のみならず不当利得をも構成することがあり、また、コピー機の設置場所を提供し、本件土地宝典を貸与する被告の行為が、幇助態様による民法719条2項所定の不法行為を構成すると評価されることがあったとしても、被告が原告らの損失と因果関係を有する利益を得ていない以上、不当利得は成立しない。原告らの主張は、採用することができない。

(中略)

 そして、著作権侵害の対象である本件土地宝典が各法務局に合計120冊備え付けられていること、本件土地宝典の売価が3万円であること(甲16)、本件土地宝典は、前記認定のとおり、複数の公図を選択して接合して一葉に表示したため、一覧性にすぐれた広範囲の情報を提供し得ること、その際に公図の誤情報を補正していること、公図情報に加え、道路、水路、鉄道などの現況情報、公共施設の所在情報、地積、地目表示などの不動産登記簿情報を付加して作成されたものであり、各種申請行為の添付資料として選択し得る資料の一つともされていたこと、特に郊外地や山林原野などの現地調査の際に便利であったことなどから、その貸出しのみならずこれを複写する需要も相当程度存在したこと、本件土地宝典は従前は10年ごとに改訂されていた(甲22)ものの、著作権侵害の期間(消滅時効の完成が認められる期間を除く。)が平成14年8月8日から平成17年2月8日までの期間であるのに対し、本件土地宝典120冊のうち最も古いものは昭和47年3月28日に発行されたものであり、最も新しいものでさえ平成4年6月24日に発行されたものであり、平成元年以降に発行されたものは120冊中17冊にすぎないこと、そもそも不特定多数の者による本件土地宝典の違法複製行為が各法務局においてどの程度の頻度でどの程度なされたかが不明であって、本件土地宝典において情報の取捨選択や表現上の工夫がされた部分がどの程度複製されたかも不明であること、原告らは本件土地宝典の著作権を、過去の損害賠償請求権も含め、合計730万円で譲り受けていることなどの事情を考慮すると、上記期間内(平成14年8月8日から平成17年2月8日まで)における本件土地宝典の違法複製行為による原告らの使用料相当額の損害は、本件土地宝典各1冊につき1万円と認めるのが相当である。
 なお、原告らは、公図の閲覧申請手数料(1通当たり500円)を参酌すべきであると主張するが、行政サービスの対価として定められた上記手数料と本件土地宝典の著作権の使用料とは性質を異にするものであるから、原告らの主張は、上記判断を左右するものとはいえない。

(中略)

 また、弁護士費用については、本件訴訟追行の困難さなど、本件訴訟に顕れたすべての事情を考慮し、12万円(原告株式会社富士不動産鑑定事務所につき9万6500円、原告Y1につき1万8000円、原告Y2につき5500円)を相当因果関係にある損害と認める。



参考判決(図書館における複製を不許可としたことの違法性につき争われた事件)
事件番号  平成06年(行ウ)第178号
裁判年月日  平成07年04月28日
裁判所名  東京地方裁判所  
判決データ:  CP-H06-Gu-178.pdf

三 争点三(国家賠償法に基づく請求)について
1 証拠(甲二)によれば、多摩市立図書館長の本件回答は、原告の複写請求を受けて、文化庁著作権課指導普及係に照会した結果、文化庁からの「本件著作物は編集著作物であるが著作者の区分が不可能な共同著作物ではない。全体について編集著作権があるとともに、個々の項目、論文にもそれぞれ著作権が働いている。各項目、論文毎に著作者が明示されている以上は、それぞれの項目、論文を一著作物単位と判断するのが妥当である。」との要旨を含む回答を受けて、本件著作物のうちの本件複写請求部分が、項目毎全部に当たるとして、なされたものである。
2 ところで、本件著作物は、【B】他一六名の編集委員が編集し、四五名の執筆者が執筆したもので(甲三)、大きな一八の節に分かれているがその節につき、「9.コンクリート工学」(項目が一三含まれている。)や「10.鋼構造・鉄筋コンクリート構造」(項目が一八含まれている。)などは一人が執筆しているのに対し、「11.基礎工学」は二人の共同の執筆にかかり、また、本件複写請求部分が含まれる「2.土質力学・土構造」のように節の中の項目毎に執筆者が分かれている項目も多くあり、一人の執筆者がその項目の一個のみ執筆しているものもあれば、項目九個を一人で著作しているものもある。また、項目を複数著作している場合にも、【A】のように続いた項目を一人で著作している場合もあれば、【C】や【D】のように離れた項目を複数著作している者もある(甲四)。したがって、本件著作物のうち、【A】は、「2.7.地盤内の応力伝播特性と沈下」(一〇四頁から一一一頁)と「2.8.地盤の安定問題」(一一二頁から一一八頁)の二項目につき、それぞれ個別の著作権を有するものと解するのが相当である。
 原告は、本件著作物は共同著作物の性質を有し、全体が単一の著作物であるから、その中の任意の一部は単一の著作物全部には当たらない旨を主張するが、本件著作物は、各項目毎にまとまった内容を有しているものと窺われかつ著作者が明示されており(甲四)、「各人の寄与を分離して個別的に利用することができないもの」(著作権法二条一二号)とはいえず、かつ、本件著作物が編集著作物であることは原告も認めるとおりであるが、編集著作物であることによってそれの部分を構成する著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない(著作権法一二条二項)ことからすれば、原告の右主張は理由がない。
 してみれば、原告の請求した本件複写請求部分は、著作物の全部に当たるものであって、「著作物の一部分」の複製物の提供を認める著作権法三一条一号の規定に当たらないものというほかはなく、その全部の複写を求めた原告の申込みに対し承諾しなかった被告の行為に違法性はない。

 なお、原告は、本件著作物は事典という公共的著作物であり、その全部を複製しても著作権を侵害することはない旨を主張するが、著作権法三一条のうち、二号の「図書館資料の保存のため必要がある場合」及び三号の「他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料の複製物を提供する場合」に全部を複製することは可能と解されるのに対し、一号の場合は「公表された著作物の一部分」と明文で規定されているのであって、原告が同条一号に基づく主張をしていることは明らかであるから、公共的著作物であるとの一事をもって、その全部を複製することができることを前提とした原告の主張は理由がない。
3 次に、著作権法三一条一号の括弧書きの規定との関係については、本件著作物を「定期刊行物」と解する余地はないのであるから、本件著作物が発行から一四年以上経過したものであること及び定価が一万三〇〇〇円であること(乙八)を考慮しても、著作権法三一条一号の括弧書きの規定により図書館における著作物の複製が許される場合と解することはできないから、被告の右行為を違法ということもできない。
 また、原告は、本件著作物は事典であるから、一般読者の情報入手権と著作者の著作物公表権を確保するという目的を両立させるべく、著作権法三一条一号の括弧書きの規定を類推すべきと主張する。しかしながら、著作物の複製を認めることはすなわち著作権の制限を伴うものであり、原告の右主張は、立法論としてはともかく、現行著作権法の解釈として採りえないものである。
4 してみれば、原告の本件複写物交付請求は著作権法三一条一号で認められた要件を欠く場合に当たるものであって、これに対し多摩市立図書館長がした本件回答は何ら違法ではないから、原告の国家賠償請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。


上記事件の控訴審判決
事件番号  平成07年(行コ)第63号
裁判年月日  平成07年11月08日
裁判所名  東京高等裁判所
判決データ:  CP-H07-Gko-63.pdf

 控訴人は、多摩市立図書館長は、本件複写請求を不許可にする前に、控訴人に対して請求の範囲を変更できないかなどと打診したことは一度もないと主張する。しかし、乙第一、第五及び第七号証によれば、多摩市立図書館においては、複写機の近辺に「コピーをされる方に」と題するお知らせが貼付してあり、右お知らせには「図書館では次の場合に限りコピーができます。」として、「2.資料の一部分であること。資料の種類により範囲が異なります。(例)「百科事典」・・・項目ごとに著者が明示されているものは項目の半分まで。(本文と図版はそれぞれの半分)」との記載があり、また、複写申込書にも、「著作物の一部分を、おひとり一部に限り複写できます。」と記載されていることが認められるから、本件複写請求部分についても、多摩市立図書館において、口頭又は文書で複写請求部分の全部が許可できない旨応答した場合、当然に「全部については許可できないが、一部についてはコピーできる」旨を表示しているものと認められる(なお、甲第二号証によれば、文書でその旨回答していることは明らかである。)から、控訴人の右主張は理由がない。
 また、控訴人は、本件の事例においては、本件複写請求部分六頁の複製を不適法であると考えるのであれば、三頁までという条件を付款として付けて許可を行えばよいのであって、右のような付款を付することは、単なる自由裁量の帰結ではなく、そうすることが多摩市立図書館長に義務づけられていると解さなければならない旨主張する。
 しかし、上記のとおり、複製物を必要とする著作物の部分を特定するのは、複製物の交付を求める図書館利用者がなすべき事柄であり、図書館長がなすべき事柄でないことは明らかであるから、多摩市立図書館長において、控訴人主張のような付款を付する義務があると解すべき根拠はない。





出版差止等請求事件(かえでの木事件)


事件番号  平成14年(ワ)第1157号
事件名  出版差止等請求事件
裁判年月日  平成14年07月03日
裁判所名  東京地方裁判所 
判決データ:  CP-H14-wa-1157.pdf    CP-H14-wa-1157-1.pdf

 (2) 判断
ア 本件かえでの所有権に基づく本件書籍の出版差止めの可否 原告は、本件かえでを撮影した写真を複製したり、複製物を掲載した書籍を出版等する権利は、本件かえでの所有者たる原告のみが排他的に有すると主張して、被告らの本件書籍の出版行為等の差止めを求める。
 しかし、所有権は有体物をその客体とする権利であるから、本件かえでに対する所有権の内容は、有体物としての本件かえでを排他的に支配する権能にとどまるのであって、本件かえでを撮影した写真を複製したり、複製物を掲載した書籍を出版したりする排他的権能を包含するものではない。そして、第三者が本件かえでを撮影した写真を複製したり、複製物を掲載した書籍を出版、販売したとしても、有体物としての本件かえでを排他的に支配する権能を侵害したということはできない。したがって、本件書籍を出版、販売等したことにより、原告の本件かえでに対する所有権が侵害されたということはできない。
 したがって、原告の上記主張は、主張自体失当である。
   イ 本件かえでの所有権侵害の不法行為の成否
(ア) 原告は、本件かえでを撮影し、その写真を掲載した本件書籍を出版、販売等したことにより本件かえでの所有権が侵害されたとして、不法行為に基づく損害賠償を求める。
 しかし、前記アで判示したように、本件かえでを撮影し、その写真を掲載した本件書籍を出版、販売等したことにより、原告の本件かえでに対する所有権が侵害されたということはできない。また、本件全証拠によっても、被告Bが、本件かえでの枝を折るなど、本件かえでの所有権を侵害する行為を行ったと認めることはできない。したがって、原告の上記主張は理由がない。
(イ) 不法行為の成否について、付加して判断する。
 本件において、被告らから原告に対し、本件損害賠償請求の根拠について求釈明がされ(答弁書第3、2項)、これに対して、原告は、本件かえでの所有権侵害に基づく請求である旨釈明し(原告第1準備書面第1、2項)、請求に係る原告の被侵害利益は、本件かえでの所有権であると明言している。しかし、原告の釈明にかかわらず、念のために、被告Bの撮影態様等が、本件かえでの所有権以外の法的利益を害すると評価されることにより、不法行為を構成するといえるか否かについても進んで検討する。
前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば、以下のとおりの事実が認められる。
a 本件かえでは高さが15メートルほどある大木であって、その美しさがマスコミで紹介されたこともあって、数多くの見物客が観賞するために、本件土地に自由に立ち入っていたこと、原告が本件看板を設置した平成12年7月ころ以前において、原告は、これらの立ち入りを問題としたことはなかったことに照らすならば、原告は、同時期以前は、本件かえでを観賞するために平穏な態様で本件土地へ立ち入ることを一般に容認していたものと認められる。
b その後、原告は、本件かえでの状態を憂慮し、その保全を図るため、営利目的での撮影について、条件を付けて認める方針を立て、同年7月に、本件土地上に、「根を踏まない、枝を折らないなど樹を大切にして下さい。本件かえでに対する私有地での撮影及び映像使用の権利は所有者にあります。撮影した映像を個人が個人として楽しむ以外は撮影、使用許可を得て下さい。無断で公に使用することはできません。」と記載した看板(本件看板)を設置した。このような看板の設置によって、同年7月ころ以降は、原告が、本件かえでの根を踏む等の本件かえでの生育に悪影響を及ぼす行為や、営利目的で本件土地に立ち入って本件かえでを撮影する行為について制限を設けたたことが、本件土地に赴いた者の間では周知されるようになった。しかし、本件看板を設置した後においても、観光客が、本件かえでを観賞したり、本件かえでを私的な目的で撮影したりすること、そのために本件土地に立ち入ることについては、何ら禁止をしていなかった。
c 被告Bが本件書籍に掲載した本件かえでの写真を撮影したのは、本件看板が設置されるより以前の時期である。本件全証拠によっても、被告Bが、本件看板の設置以降、本件土地に立ち入って本件かえでを撮影したことを認めることはできず、また、本件かえでの生育等に悪影響を及ぼす可能性のある行為をしたことも認めることはできない。
 上記の経緯に照らすならば、第三者が、原告が本件看板を設置した以降に、本件かえでの生育に悪影響を及ぼすと考えて原告が明示的に禁止した行為を行うために本件土地に立ち入った場合には、原告の本件土地の所有権を侵害する不法行為を構成することは明らかであり、本件土地の所有権侵害行為と相当因果関係を有する範囲の損害を賠償すべきことになる。
 しかし、上記のとおり、本件看板を設置した後に、被告Bが、そのような行為をしたことは認められないから、被告Bの原告に対する不法行為は成立しない。その他、本件全証拠によるも、原告の法的保護に値する何らかの利益を侵害したことも認められない。
(3) なお、付言する。
 原告は、本件かえでの所有権に基づき上記の各行為を阻止できない限り、本件かえでを保全することができない旨述べる。しかし、原告が、本件土地上に所在する本件かえでの生育環境の悪化を憂慮して、本件かえでの生育等に悪影響を及ぼすような第三者の行為を阻止するためであれば、本件土地の所有権の作用により、本件かえでを保全する目的を達成することができる。既に述べたとおり、現に、原告は、本件土地への立ち入りに際しては、本件かえでの生育等に悪影響を及ぼす可能性のある行為をしてはならないこと、許可なく本件かえでを営利目的で撮影してはならないことを公示しているのであるから、第三者が上記の趣旨に反して本件土地へ立ち入る場合には、原告は当該立入り行為を排除することもできるし、上記第三者には不法行為も成立する。また、本件土地内に、美観を損ねないような柵を設けること等によって、より確実に上記目的を達成することもできるというべきである。





損害賠償請求事件(モンタージュ写真事件)

<本件モンタージュ写真から本件写真における本質的な特徴自体を直接感得することができ、本件写真の利用は、本件写真についての同一性保持権を侵害する改変であるといわなければならない。さらに、本件モンタージュ写真に取り込み利用されている本件写真部分は、本件モンタージュ写真の表現形式上従たるものとして引用されているということはできないから、本件写真が本件モンタージュ写真中に法三〇条一項第二にいう意味で引用されているということもできない。よって、本件モンタージュ写真の発行は、上告人の同意がない限り、上告人が本件写真の著作者として保有する著作者人格権を侵害するものである。>

事件番号  昭和51年(オ)第923号
事件名  損害賠償請求事件
裁判年月日  昭和55年03月28日
法廷名  最高裁判所第三小法廷
判決データ:  CP-S51-o-923.pdf

 法三〇条一項第二は、すでに発行された他人の著作物を正当の範囲内において自由に自己の著作物中に節録引用することを容認しているが、ここにいう引用とは、紹介、参照、論評その他の目的で自己の著作物中に他人の著作物の原則として一部を採録することをいうと解するのが相当であるから、右引用にあたるというためには、引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ、かつ、右両著作物の間に前者が主、後者が従の関係があると認められる場合でなければならないというべきであり、更に、法一八条三項の規定によれば、引用される側の著作物の著作者人格権を侵害するような態様でする引用は許されないことが明らかである。
 そこで、原審の確定した前記事実に基づいて本件写真と本件モンタージュ写真とを対照して見ると、本件写真は、遠方に雪をかぶつた山々が左右に連なり、その手前に雪におおわれた広い下り斜面が開けている山岳の風景及び右側の雪の斜面をあたかもスノータイヤの痕跡のようなシュプールを描いて滑降して来た六名のスキーヤーを俯瞰するような位置で撮影した画像で構成された点に特徴があると認められるカラーの写真であるのに対し、本件モンタージュ写真は、その左側のスキーヤーのいない風景部分の一部を省いたものの右上側で右シュプールの起点にあたる雪の斜面上縁に巨大なスノータイヤの写真を右斜面の背後に連なる山々の一部を隠しタイヤの上部が画面の外にはみ出すように重ね、これを白黒の写真に複写して作成した合成写真であるから、本件モンタージュ写真は、カラーの本件写真の一部を切除し、これに本件写真にないスノータイヤの写真を合成し、これを白黒の写真とした点において、本件写真に改変を加えて利用し作成されたものであるということができる。
 ところで、本件写真は、右のように本件モンタージュ写真に取り込み利用されているのであるが、利用されている本件写真の部分(以下「本件写真部分」という。)は、右改変の結果としてその外面的な表現形式の点において本件写真自体と同一ではなくなったものの、本件写真の本質的な特徴を形成する雪の斜面を前記のようなシュプールを描いて滑降して来た六名のスキーヤーの部分及び山岳風景部分中、前者についてはその全部及び後者についてはなおその特徴をとどめるに足りる部分からなるものであるから、本件写真における表現形式上の本質的な特徴は、本件写真部分自体によってもこれを感得することができるものである。
 そして、本件モンタージュ写真は、これを一瞥しただけで本件写真部分にスノータイヤの写真を付加することにより作成されたものであることを看取しうるものであるから、前記のようにシュプールを右タイヤの痕跡に見立て、シュプールの起点にあたる部分に巨大なスノータイヤ一個を配することによって本件写真部分とタイヤとが相合して非現実的な世界を表現し、現実的な世界を表現する本件写真とは別個の思想、感情を表現するに至っているものであると見るとしても、なお本件モンタージュ写真から本件写真における本質的な特徴自体を直接感得することは十分できるものである。そうすると、本件写真の本質的な特徴は、本件写真部分が本件モンタージュ写真のなかに一体的に取り込み利用されている状態においてもそれ自体を直接感得しうるものであることが明らかであるから、被上告人のした前記のような本件写真の利用は、上告人が本件写真の著作者として保有する本件写真についての同一性保持権を侵害する改変であるといわなければならない。
 のみならず、すでに述べたところからすれば、本件モンタージュ写真に取り込み利用されている本件写真部分は、本件モンタージュ写真の表現形式上前説示のように従たるものとして引用されているということはできないから、本件写真が本件モンタージュ写真中に法三〇条一項第二にいう意味で引用されているということもできないものである。そして、このことは、原審の確定した前示の事実、すなわち、本件モンタージュ写真作成の目的が本件写真を批判し世相を風刺することにあつたためその作成には本件写真の一部を引用することが必要であり、かつ、本件モンタージュ写真は、美術上の表現形式として今日社会的に受けいれられているフォト・モンタージュの技法に従ったものである、との事実によっても動かされるものではない。
 そうすると、被上告人による本件モンタージュ写真の発行は、上告人の同意がない限り、上告人が本件写真の著作者として保有する著作者人格権を侵害するものであるといわなければならない。
 なお、自己の著作物を創作するにあたり、他人の著作物を素材として利用することは勿論許されないことではないが、右他人の許諾なくして利用をすることが許されるのは、他人の著作物における表現形式上の本質的な特徴をそれ自体として直接感得させないような態様においてこれを利用する場合に限られるのであり、したがって、上告人の同意がない限り、本件モンタージュ写真の作成にあたりなされた本件写真の前記改変利用をもって正当とすることはできないし、また、例えば、本件写真部分とスノータイヤの写真とを合成した奇抜な表現形式の点に着目して本件モンタージュ写真に創作性を肯定し、本件モンタージュ写真を一個の著作物であるとみることができるとしても、本件モンタージュ写真のなかに本件写真の表現形式における本質的な特徴を直接感得することができること前記のとおりである以上、本件モンタージュ写真は本件写真をその表現形式に改変を加えて利用するものであって、本件写真の同一性を害するものであるとするに妨げないものである。


原判決データ: CP-S47-ne-2816.pdf  CP-S47-ne-2816-1.pdf
東京高等裁判所
昭和51年05月19日判決
昭和47年(ネ)第2816号
   
             本件写真                        本件モンタージュ写真





商品写真の著作権

<ホームページにおける写真の著作権(複製権)侵害を認定。逸失利益、慰謝料について判断。>

事件番号  平成17年(ネ)第10094号
事件名  請負代金事件
裁判年月日  平成18年03月29日
裁判所名  知的財産高等裁判所
判決データ:  CP-H17-ne-10094.pdf

(1) 本件各写真の著作物性及び著作権侵害の有無について
ア 写真は、被写体の選択・組合せ・配置、構図・カメラアングルの設定、シャッターチャンスの捕捉、被写体と光線との関係(順光、逆光、斜光等)、陰影の付け方、色彩の配合、部分の強調・省略、背景等の諸要素を総合してなる一つの表現である。
このような表現は、レンズの選択、露光の調節、シャッタースピードや被写界深度の設定、照明等の撮影技法を駆使した成果として得られることもあれば、オートフォーカスカメラやデジタルカメラの機械的作用を利用した結果として得られることもある。また、構図やシャッターチャンスのように人為的操作により決定されることの多い要素についても、偶然にシャッターチャンスを捉えた場合のように、撮影者の意図を離れて偶然の結果に左右されることもある。
 そして、ある写真が、どのような撮影技法を用いて得られたものであるのかを、その写真自体から知ることは困難であることが多く、写真から知り得るのは、結果として得られた表現の内容である。撮影に当たってどのような技法が用いられたのかにかかわらず、静物や風景を撮影した写真でも、その構図、光線、背景等には何らかの独自性が表れることが多く、結果として得られた写真の表現自体に独自性が表れ、創作性の存在を肯定し得る場合があるというべきである。
 もっとも、創作性の存在が肯定される場合でも、その写真における表現の独自性がどの程度のものであるかによって、創作性の程度に高度なものから微少なものまで大きな差異があることはいうまでもないから、著作物の保護の範囲、仕方等は、そうした差異に大きく依存するものというべきである。したがって、創作性が微少な場合には、当該写真をそのままコピーして利用したような場合にほぼ限定して複製権侵害を肯定するにとどめるべきものである。


(中略)

(ウ) 確かに、本件各写真は、ホームページで商品を紹介するための手段として撮影されたものであり、同じタイプの商品を撮影した他の写真と比べて、殊更に商品の高級感を醸し出す等の特異な印象を与えるものではなく、むしろ商品を紹介する写真として平凡な印象を与えるものであるとの見方もあり得る。しかし、本件各写真については、前記認定のとおり、被写体の組合せ・配置、構図・カメラアングル、光線・陰影、背景等にそれなりの独自性が表れているのであるから、創作性の存在を肯定することができ、著作物性はあるものというべきである。他方、上記判示から明らかなように、その創作性の程度は極めて低いものであって、著作物性を肯定し得る限界事例に近いものといわざるを得ない。
ウ そこで、本件各写真の複製権の侵害の有無について考えるに、本件各写真の創作性は極めて低いものではあるが、被控訴人らによる侵害行為の態様は、本件各写真をそのままコピーして被控訴人ホームページに掲載したというものである(同事実は当事者間に争いがない。)から、本件各写真について複製権の侵害があったものということができる。

(中略)

(1) 逸失利益について
本件各写真は本件ホームページで商品の広告販売を行うために作成されたものであり、同様にホームページで広告販売を行う会社である被控訴人らが、本件各写真を8か月間にわたり被控訴人ホームページに掲載して同一商品の広告販売を行ったことにより、ラフィーネには何らかの逸失利益の損害が生じたものと認められる。
 もっとも、被控訴人らが自ら同一商品の写真を撮影して被控訴人ホームページに掲載することは容易であり、本件各写真が被控訴人らの撮影した写真と比べて格別に優れているわけでもないことに照らせば、本件各写真を被控訴人ホームページに掲載したことにより被控訴人らがどの程度の利益を受けたのかは不明であり、また、本件各写真を他社に使用させる場合の使用料も不明である。
 したがって、本件においては逸失利益の額を証明することが極めて困難であるから、著作権法114条の5に基づき相当な損害額を認定するほかなく、その額については、上記事情も考慮して、1万円とするのが相当である。
(2) 慰謝料について
 被控訴人らの複製権侵害行為により生じた損害は、前記(1)の損害に対する損害賠償によって回復されるのであって、本件事実関係の下においては、著作権侵害による慰謝料請求権が発生したということはできない。なお、控訴人の請求がラフィーネの著作者人格権の侵害に基づく慰謝料請求権を譲り受けてなす請求を含むものであると解したとしても、被控訴人らの行為がラフィーネの公表権、氏名表示権ないし同一性保持権を侵害することについての具体的な主張はなく、また、証拠上もこれらの侵害を基礎付ける事実は認め難いから、やはり慰謝料請求権が発生したとはいえない。





損害賠償請求事件(「豆腐屋」の浮世絵事件)

<模写作品に新たな創作的表現が付与されたとは認められないため、著作物性を否定。>

事件番号  平成17年(ワ)第26020号
事件名  損害賠償請求事件
裁判年月日  平成18年05月11日
裁判所名  東京地方裁判所 
判決データ:  CP-H17-wa-26020.pdf     CP-H17-wa-26020-1.pdf

控訴審判決
事件番号  平成18年(ネ)第10057号
事件名  損害賠償請求控訴事件
裁判年月日  平成18年11月29日
裁判所名  知的財産高等裁判所  
判決データ:  CP-H18-ne-10057.pdf

 著作権法は、著作者による思想又は感情の創作的表現を保護することを目的としているのであるから、模写行為の制作過程において模写制作者自身の自主的な個性、好み、洞察力、技量が発揮されたとしても、その結果としての模写作品に新たな創作的表現が付与されたと認めることができなければ、著作物性を有するということはできない。なお、ここにいう新たな創作的表現とは、模写作品に接する者が原画の表現上の本質的特徴を直接感得することができると同時に、新たに別な創作的表現を感得し得ると評価することができるものであれば足りるのであって、「模写の対象である原画も含めて先行する著作物に対して、他に類例がないとか全く独創的であること」までをも要するものではなく、このことは、上記の著作権法の目的に照らして明らかである。
 原判決は、「模写作品において、なお原画における創作的表現のみが再現されているにすぎない場合には、当該模写作品については、原画とは別個の著作物としてこれを著作権法上保護すべき理由はないというべきである。したがって、原画と模写作品との間に表現上の実質的同一性が存在する場合には、模写制作者が模写制作の過程においてどのように原画を認識し、どのようにこれを再現したとしても、・・・それらはいずれもその結果として原画の創作的表現を再現するためのものであるにすぎず、模写制作者の個性がその模写作品に表現されているものではない。」(18頁17ないし26行目)と説示するところ、これは上記と同じ趣旨をいうものであるから、著作権法における「創作性」の解釈に誤りがあるということはできない。

       

             原画                              模写作品





書籍所有権侵害禁止請求事件

事件番号  昭和58年(オ)第171号
事件名  書籍所有権侵害禁止
裁判年月日  昭和59年01月20日
法廷名  最高裁判所第二小法廷
判決データ:  CP-S58-o-171.pdf

 美術の著作物の原作品は、それ自体有体物であるが、同時に無体物である美術の著作物を体現しているものというべきところ、所有権は有体物をその客体とする権利であるから、美術の著作物の原作品に対する所有権は、その有体物の面に対する排他的支配権能であるにとどまり、無体物である美術の著作物自体を直接排他的に支配する権能ではないと解するのが相当である。そして、美術の著作物に対する排他的支配権能は、著作物の保護期間内に限り、ひとり著作権者がこれを専有するのである。そこで、著作物の保護期間内においては、所有権と著作権とは同時的に併存するのであるが、所論のように、保護期間内においては所有権の権能の一部が離脱して著作権の権能と化し、保護期間の満了により著作権が消滅すると同時にその権能が所有権の権能に復帰すると解するがごときは、両権利が前記のように客体を異にすることを理解しないことによるものといわざるをえない。著作権の消滅後は、所論のように著作権者の有していた著作物の複製権等が所有権者に復帰するのではなく、著作物は公有(パブリツク・ドメイン)に帰し、何人も、著作者の人格的利益を害しない限り、自由にこれを利用しうることになるのである。したがって、著作権が消滅しても、そのことにより、所有権が、無体物としての面に対する排他的支配権能までも手中に収め、所有権の一内容として著作権と同様の保護を与えられることになると解することはできないのであって、著作権の消滅後に第三者が有体物としての美術の著作物の原作品に対する排他的支配権能をおかすことなく原作品の著作物の面を利用したとしても、右行為は、原作品の所有権を侵害するものではないというべきである。
 小説のような言語の著作物の原作品である原稿が、通常、美術の著作物の原作品のようにそれ自体としては財産的価値を有しないのは、美術の著作物の場合は、原作品によらなければ真にその美術的価値を享受することができないことから、原作品自体が取引の対象とされるのに対し、言語の著作物の場合は、原作品によらなくとも複製物によつてその表現内容を感得することができるところから、いきおい出版物としての複製物が取引の対象とされるからにすぎず、言語の著作物の原作品についても、有体物としての面と無体物としての面とがあることは、美術の著作物の原作品におけると同様であり、両者の間に本質的な相違はないと解されるのであって、所論のように、美術の著作物の原作品についてのみ、著作権の消滅により原作品に対する所有権が無体物の面に対する排他的支配権能までも有することになると解すべき理由はない。そして、美術の著作物の原作品の所有権が譲渡された場合における著作権者と所有権者との関係について規定する著作権法四五条一項、四七条の定めは、著作権者が有する権利(展示権、複製権)と所有権との調整を図るために設けられたものにすぎず、所有権が無体物の面に対する排他的支配権能までも含むものであることを認める趣旨のものではないと解される。また、保護期間の満了後においても第三者が美術の著作物の複製物を出版すると、所論のように、美術の著作物の原作品の所有権者に対価を支払って原作品の利用の許諾を求める者が減少し、原作品の所有権者は、それだけ原作品によつて収益をあげる機会を奪われ、経済上の不利益を受けるであろうことは否定し難いところであるが、第三者の複製物の出版が有体物としての原作品に対する排他的支配をおかすことなく行われたものであるときには、右複製物の出版は単に公有に帰した著作物の面を利用するにすぎないのであるから、たとえ原作品の所有権者に右のような経済上の不利益が生じたとしても、それは、第三者が著作物を自由に利用することができることによる事実上の結果であるにすぎず、所論のように第三者が所有権者の原作品に対する使用収益権能を違法におかしたことによるものではない。原判決が、被上告人の複製物の出版によっては上告人の原作品に対する使用収益権能が物理的に妨げられるものではなく、また、他人の権利の経済的価値の下落をもたらすような結果を生ぜしめる行為であるというだけではこれを違法とはいえない旨判示するのも、その意味するところは、ひっきょう、右に説示したところと同趣旨に帰するものと解されるのである。更に、博物館や美術館において、著作権が現存しない著作物の原作品の観覧や写真撮影について料金を徴収し、あるいは写真撮影をするのに許可を要するとしているのは、原作品の有体物の面に対する所有権に縁由するものと解すべきであるから、右の料金の徴収等の事実は、所有権が無体物の面を支配する権能までも含むものとする根拠とはなりえない。
 料金の徴収等の事実は、一見所有権者が無体物である著作物の複製等を許諾する権利を専有することを示しているかのようにみえるとしても、それは、所有権者が無体物である著作物を体現している有体物としての原作品を所有していることから生じる反射的効果にすぎないのである。若しも、所論のように原作品の所有権者はその所有権に基づいて著作物の複製等を許諾する権利をも慣行として有するとするならば、著作権法が著作物の保護期間を定めた意義は全く没却されてしまうことになるのであって、仮に右のような慣行があるとしても、これを所論のように法的規範として是認することはできないものというべきである。





書籍『激数占い』事件

<著作権法上の複製権侵害、翻案権侵害、同一性保持権侵害のいずれにも当たらない>

事件番号  平成19年(ワ)第31919号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判年月日  平成20年06月11日
裁判所名  東京地方裁判所
判決データ:  CP-H19-wa-31919.pdf

1 複製、翻案等
 著作権法は、思想又は感情の創作的な「表現」を保護するものである(著作権法2条1項1号)。したがって、既存の著作物に依拠して創作された著作物が、思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など表現それ自体ではない部分又は表現上の創作性がない部分において、既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には、複製にも翻案にも当たらない(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決民集55巻4号837頁参照)。また、上記の複製にも翻案にも当たらない著作物は、同一性保持権を侵害するものでもない。
2 原告書籍と被告書籍1との実質的同一性について
(1) 旧暦に基づく算出
 ア 前提事実(2)イ(ア)によれば、被告書籍1の1は、原告書籍1と表現において全く異なっていると認められ、複製権侵害、翻案権侵害、同一性保持権侵害のいずれにも当たらない。
 イ これに反する原告の主張は、「旧暦に従って、毎年の立春から翌年の節分までを1年として区分する」という「アイデア」における同一性を指摘するものにすぎず、到底採用することができない。


事件番号  平成20年(ネ)第10058号
事件名  損害賠償等請求控訴事件
裁判年月日  平成20年11月27日
裁判所名  知的財産高等裁判所  
判決データ:  CP-H20-ne-10058.pdf

 東京地方裁判所による上記原判決に対する控訴審判決
 結論
 原告の複製権、翻案権に基づく請求は、いずれも理由がない。
 よって、原告の複製権、翻案権に基づく請求をいずれも棄却すべきものとした原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却する。





著作権侵害差止請求事件(映画のDVD事件)

事件番号  平成19年(ワ)第16775号
事件名  著作権侵害差止請求事件
裁判年月日  平成20年01月28日
裁判所名  東京地方裁判所 
判決データ:  CP-H19-wa-16775.pdf

第3 争点に対する当裁判所の判断
1 争点1(本件両作品の著作者)について
(1) 現行著作権法16条は、映画の著作物の著作者を定めているところ、同規定は、現行著作権法施行前に創作された著作物については適用されない(現行著作権法附則4条本件両)。作品は、現行著作権法施行前に創作された著作物であるから、その著作者について、現行著作権法16条は適用されず、旧著作権法が適用されるところ、同法においては映画の著作物の著作者について直接定めた規定はない。
 そこで、旧著作権法における映画の著作物の著作者について検討すると、旧著作権法においても、現行著作権法と同様に、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する思想又は感情を創作的に表現した著作物の保護を目的としていると解され、思想又は感情を創作的に表現し得るのは自然人のみであり、元来、著作者となり得るのは自然人であるとされていたのであるから、映画の著作物の場合も、思想又は感情を創作的に表現した者が著作者となるというべきであり、具体的には、現行著作権法16条と同様に、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者が著作者であるというべきである。
(2) そして、本件両作品において、黒澤は、監督を務めており、本件両作品の全体的形成に創作的に寄与している者と推認され、それを覆すに足りる証拠はない。
 確かに、本件両作品は、劇場公開用の娯楽映画であって、映画会社である原告が資金提供を行い、その管理の下で多数のスタッフやキャストが関与して製作されたものであるが、そのことから、直ちに、黒澤の創作的な寄与の程度が減じられるものではないし、黒澤は、本件両作品の脚本も担当していたこと(甲15、乙9)からすると、監督のみを務める者と比較して、より一貫したイメージを持ちつつ、全体的形成に創作的に関わっていたというべきである。
 したがって、黒澤は、他に著作者が存するか否かはさておき、少なくとも本件両作品の著作者の一人であると認められる。
(3) 被告は、当時の映画関係者の考えに照らせば、本件両作品の著作者は映画製作者である原告である旨主張するが、当時の映画関係者の考えや、映画製作者を著作者とする解釈が一般的であったことを示す資料もなく、被告の上記主張は認められない。
また、被告は、本件両作品のような娯楽映画においては、多数のスタッフやキャストが関与し、出資者である映画会社と実際に創作作業に従事した者らとの関係も複雑なのであるから、この場合には、映画製作者を著作者とみるべきであると主張するが、このような事情を考慮しても、上記(2)において検討したとおり、黒澤が著作者であることが認められるのであって、被告の上記主張は理由がない。
2 争点2(原告は本件両作品の頒布権を有するか)について
(1) 現行著作権法29条1項は、映画の著作物の著作権の帰属について定めているところ、同規定は、現行著作権法施行前に創作された映画の著作物には適用されず、同著作物の著作権の帰属については、なお従前の例によるとされた現行著作権法附則5( 条1項)。本件両作品は、現行著作権法施行前に創作された映画の著作物であるから、その著作権の帰属(承継)について、旧著作権法が適用されるのであるが、旧著作権法には、映画の著作物の著作権の帰属(承継)について直接定めた規定はない。
 そうすると、現行著作権法施行前に創作された映画の著作物について、著作者ではない映画製作者が当該映画の著作権を取得するには、当該映画の著作権を原始的に取得した著作者から、著作権の譲渡を受けることを要するものといえる。
(2) これを本件についてみると、本件両作品の著作者である黒澤は、同作品の著作権を取得したものと認められるところ、本件両作品の映画製作者である原告は、自らが原始的に本件両作品の著作権を取得した旨を主張するものではないが松竹映画との表、「」示を付して本件両作品を公開・興行し、原告が著作権者である旨の表示を付して本件両作品を収録、複製したDVD商品を販売しており(甲1の1、1の2、15、乙9)、これに対して黒澤ないしその相続人等が異議を唱えていたなどの事情は証拠上うかがわれず、黒澤の相続人が代表者を務め、黒澤に関する諸権利を管理している株式会社黒澤プロダクションは、黒澤が本件両作品の著作権を原告に移転することを容認しており、本件両作品の著作権が原告に帰属することを認める旨述べていること(甲2)にかんがみれば、黒澤は、原告に対して本件両作品の著作権を譲渡していたと推認することができる。
 したがって、原告は、黒澤から本件両作品の著作権を承継したというべきである。
(3) 原告が、黒澤から本件両作品の著作権を承継したとしても、頒布権については、現行著作権法において初めて権利として認められた(26条)ものであるから、現行著作権法施行前に著作権の譲渡が行われた場合に、当該著作物の頒布権についてどのように考えるべきかが問題となる。
 この点、現行著作権法附則9条は、「この法律の施行前にした旧法の著作権の譲渡その他の処分は、附則第15条第1項の規定に該当する場合を除き、
 これに相当する新法の著作権の譲渡その他の処分とみなす。」と規定しているが、その趣旨は、旧著作権法に基づく著作権と、現行著作権法に基づく著作権とでは、その種類及び内容に差異が存在することから、法により内容が規定されるという著作権の性質上、権利内容が拡大した部分についても処分の対象となっていたものとして扱うものとすることと解される。
 そうすると、旧著作権法下において著作権を全部譲渡した場合には、特段の事情のない限り、現行著作権法により権利内容が拡大された著作権の全部を譲渡したとみなされるというべきである。
(4) そして、本件両作品の著作権の譲渡に関する上記(2)の各事情や、黒澤が本件両作品の著作権に含まれる特定の支分権を自己に留保する意思を有していたと認めるに足りる証拠がないことに照らせば、本件においても、原告は、黒澤から本件両作品の著作権の全部を承継したと認めるのが相当であり、これを覆すべき特段の事情はないというべきである。
 したがって、原告は、本件両作品の頒布権を有すると認められる。





損害賠償請求事件(交通安全標語)

事件番号  平成13年(ワ)第2176号
事件名  損害賠償請求事件
裁判年月日  平成13年05月30日
裁判所名  東京地方裁判所  
判決データ:  CP-H13-wa-2176.pdf

 著作物性の有無について
 著作権法による保護の対象となる著作物は、「思想又は感情を創作的に表現したものである」ことが必要である。「創作的に表現したもの」というためには、当該作品が、厳密な意味で、独創性の発揮されたものであることまでは求められないが、作成者の何らかの個性が表現されたものであることが必要である。文章表現による作品において、ごく短かく、又は表現に制約があって、他の表現がおよそ想定できない場合や、表現が平凡で、ありふれたものである場合には、筆者の個性が現れていないものとして、創作的に表現したものということはできない。
 そこで、原告スローガンについて、この観点から著作物性の有無を検討する。
弁論の全趣旨によれば、原告は、親が助手席で、幼児を抱いたり、膝の上に乗せたりして走行している光景を数多く見かけた経験から、幼児を重大な事故から守るには、母親が膝の上に乗せたり抱いたりするよりも、チャイルドシートを着用させた方が安全であるという考えを多くの人に理解してもらい、チャイルドシートの着用習慣を普及させたいと願って、「ボク安心 ママの膝(ひざ)より チャイルドシート」という標語を作成したことが認められる。そして、原告スローガンは、3句構成からなる5・7・5調(正確な字数は6字、7字、8字)調を用いて、リズミカルに表現されていること、「ボク安心」という語が冒頭に配置され、幼児の視点から見て安心できるとの印象、雰囲気が表現されていること、「ボク」や「ママ」という語が、対句的に用いられ、家庭的なほのぼのとした車内の情景が効果的かつ的確に描かれているといえることなどの点に照らすならば、筆者の個性が十分に発揮されたものということができる。
 したがって、原告スローガンは、著作物性を肯定することができる。

(中略)

 そこで、原告スローガンと被告スローガンの各表現を対比する。
 両スローガンは、「ママの」「より」「チャイルドシート」の語が共通する。
 上記共通点については、両スローガンとも、チャイルドシート着用普及というテーマで制作されたものであるから、「チャイルドシート」という語が用いられることはごく普通であること、また車内で母親が幼児を抱くことに比べてチャイルドシートを着用することが安全であることを伝える趣旨からは、「ママの より」という語が用いられることもごく普通ということができ、原告スローガンの創作性のある点が共通すると解することはできない。
 これに対し、原告スローガンは、被告スローガンと対比して、@「ボク安心」の語句があること、A前者が「膝」であるのに対し、後者は「胸」であること、B前者は、6字、7字、8字の合計21字が3句で構成されているのに対し、後者は、7字、8字の合計15字が2句で構成されている点において相違する。そして、@原告スローガンにおいては「ボク安心」という語句が加わっていることにより、子供の視点から見た安心感や車内のほのぼのとした情景が表現されているという特徴があるのに対し、被告スローガンにおいては、そのような特徴を備えていないこと、A「ママの膝」と「ママの胸」とでは与えるイメージ(子供の年齢、抱きかかえた姿勢等)に相違があること、B原告スローガンにおいては、3句構成からなる5・7・5調が用いられ、全体として、リズミカル、かつ、ゆったりした印象を与えるのに対し、被告スローガンにおいては、2句構成からなる7・5調が用いられ、極めて簡潔で、やや事務的な印象を与えること等から、前記各相違は、決して些細なものではなく、いずれも原告スローガンの創作性を根拠付ける部分における相違といえる。
 そうとすると、両者は、前記の共通点があっても、なお実質的に同一のものということはできない。





損害賠償等請求事件(3Dソフトウエア事件)

事件番号  平成17年(ワ)第23419号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判年月日  平成19年03月16日
裁判所名  東京地方裁判所  

(3) 弁護士費用
 弁論の全趣旨によれば、原告は、本訴原告代理人である藤井弁護士らに対し、本訴の提起及び追行を委任し、その着手金及び成功報酬として1億円を支払うことを約したことが認められる。本件改変行為と相当因果関係を有する弁護士費用としては、本件事案の内容、性質、訴訟経緯等一切の事情を総合すると、前記(1)の損害額の5%程度である7500万円をもって相当と認める。
(4) まとめ
 よって、損害額は、15億8911万2875円となる。
 15億1411万2875円+7500万円=15億8911万2875円





「聖教グラフ」写真の著作権侵害事件

<被告ホームページにおける被告写真の掲載行為は、著作権法32条1項における「公正な慣行に合致」し、かつ、「引用の目的上正当な範囲内で行なわれる」引用に当たるということはできない。>

事件番号  平成18年(ワ)第15024号
事件名  損害賠償請求事件
裁判年月日  平成19年04月12日
裁判所名  東京地方裁判所 
判決データ:  CP-H18-wa-15024.pdf

 著作権法32条1項における「公正な慣行に合致」し、かつ、「引用の目的上正当な範囲内で行なわれる」引用とは、健全な社会通念に従って相当と判断されるべき態様のものでなければならず、かつ、報道、批評、研究その他の目的で、引用すべき必要性ないし必然性があり、自己の著作物の中に、他人の著作物の原則として一部を採録するか、絵画、写真等の場合には鑑賞の対象となり得ない程度に縮小してこれを表示すべきものであって、引用する著作物の表現上、引用する側の著作物と引用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができるとともに、両著作物間に、引用する側の著作物が「主」であり、引用される側の著作物が「従」である関係が存する場合をいうものと解すべきである。
 被告は、前記認定のとおり、Cが名誉欲を露わにした行動が多いと考え、これを強く非難する目的で、被告ホームページに被告写真を掲載し、上記コメントを掲載したものである。しかし、被告がCの宗教者としての上記行動を非難する記事を創作するために、他人の著作物である本件写真を使用しなければならない必然性はなく、宗教者としてのCの上記行動を非難するのであれば、ほかにさまざまな表現方法によることが可能なはずである。また、本件写真は、上記認定のようなものであり、本件写真を被告ホームページにおけるように、Cを揶揄するような態様において使用することは、本件写真の著作者の制作意図にも強く反し、本件写真の著作者が正当な引用として許容するとは到底考えがたいところのものである。
 また、被告ホームページは、前記のような構成であり、被告が記載したものは、わずかに「Cの御尊体アルバム」という表題と「↓西洋かぶれの出来そこない!(笑)↓」との記載及び引用形式の上記記載だけであるにすぎず、被告ホームページにおけるこの表現方法は、これらの表題や記載と共に、被告写真を掲載することにその主眼があるといえるものである。被告ホームページにおけるこれらの表題や上記記載部分と被告写真とは、前者が「主」で、後者が「従」であるという関係にあるということができないことは明らかである。
 したがって、被告ホームページにおける被告写真の掲載行為は、健全な社会通念に照らし許容し得る引用ということはできず、これを「公正な慣行に合致」し、かつ、「引用の目的上正当な範囲内で行なわれる」ものということはできない。
 よって、被告ホームページにおける被告写真の掲載行為は、これを著作権法32条1項の「引用」に当たるということはできない。
6 小括
 以上によれば、原告は、本件写真の著作権及び著作者人格権を有しており、被告は、本件写真の複製物である被告写真を複製して被告ホームページに掲載して公衆送信(送信可能化)を行ったものと認められ(著作権法2条1項九の五、十五、また、被告写真は、) 本件写真を白黒にし、その上下左右を一部切除したものであるから、かかる被告の行為は原告の上記著作権(複製権、公衆送信権)、同一性保持権を侵害するものと認められる(同法20条1項、21条、23条1項)。





デンバー総領事写真事件

事件番号  平成16年(ネ)第3565号
事件名  損害賠償請求事件
裁判年月日  平成17年03月24日
裁判所名  東京高等裁判所
判決データ:  CP-H16-ne-3565.pdf

(2) 氏名表示権及び同一性保持権の侵害による損害額 被告の公衆送信及び本件各地方ネットワーク局の各公衆送信においては、本件著作物の一部分を著作者として原告の氏名を表示しないで放送されたものであるところ、そのうち、平成13年7月10日放送の「ニュース プラス1」及び「きょうの出来事」においては、本件ウェブページ全体の映像を映した上で、そのナレーションにおいて「A氏のホームページ」と述べて、同番組を見た視聴者に対し、本件著作物の出所を明示しているかのように報道し、本件著作物につき、著作者として原告の氏名を表示しなかったにとどまらず、事実と異なる出所表示をしたものであり、氏名表示権の侵害態様は重大なものがある。
 そして、本件著作物は本件ウェブサイト上に掲載するために撮影された肖像写真であって、被告による放送に先んじて既に本件ウェブサイト上に掲載され、公開されていたものであるところ、番組において本件著作物における顔の部分は改変されていないにしても、本件著作物が、日本の国旗とコロラド州旗を背景に、テンガロンハット(いわゆるカウボーイハット)をかぶり、西部独特のジャケットを着たA元総領事の上半身の写真であるのに対し(当事者間に争いのない事実)、放映された写真の中には、A元総領事の肩から上の部分だけをトリミングしてその周りに黒っぽい色の楕円形の背景を配したものがあること(甲12の1)、そして、原告が本件著作物を撮影した目的は、デンバー総領事を好意的に紹介しコロラド州での日米友好のためにするものであって、当時の総領事の同意の下にて撮影したのが本件著作物であること、被告が本件著作物を無断で使用した報道の趣旨は、社会的問題になっていた外務省の不祥事に関連して不正疑惑の対象となる人物の顔写真として掲載したものであって、写真家としても活動している原告の創作意図に反するものであったこと、などの諸事情を総合すれば、被告の公衆送信及び本件各地方ネットワーク局の各公衆送信における本件著作物の氏名表示権及び同一性保持権の侵害による損害額(慰謝料)としては、60万円と認定するのが相当である。
  (3) 弁護士費用
 原告が、本訴提起及び遂行のために弁護士を選任したことは当裁判所に顕著であり、本件事案の内容、控訴審の本判決に至るまでの審理の経緯その他諸般の事情を考慮すれば、原告に生じた弁護士費用のうち40万円については、被告の公衆送信権侵害・著作者人格権侵害の不法行為と相当因果関係のある損害として被告が負担すべきものと認めるのが相当である。
 被告は、本訴提起前から著作権侵害について反論せず、原告に対して謝罪し、金銭支払を申し出ていた事情があることからすると、本件著作権侵害と弁護士費用との間に相当因果関係はない旨主張するが、事前交渉において話合いがつかず、訴訟に至ることは通常あり得る経緯というべきであるから、このような事情が存したからといって、弁護士費用との間の相当因果関係を否定することはできない。同様の理由により、訴訟費用の全額を原告負担にすべきとする被告の主張も採用することができない。
  (4) 損害額のまとめ
 以上をまとめると、原告が被った被告の著作権侵害による損害は計60万円、著作者人格権侵害による損害は計60万円、弁護士費用は計40万円であって、これらの合計160万円が原告の被った損害額となる。

デンバー総領事写真事件
事件番号  平成15年(ワ)第11889号
事件名  損害賠償請求事件
裁判年月日  平成16年06月11日
裁判所名  東京地方裁判所
原審判決データ:  CP-H15-wa-11889.pdf





「照明器具の宣伝広告用カタログ」事件

<本件各カタログが本件各作品(書の著作物)の複製物であるとも、その翻案に係る二次的著作物であるともいえないから、氏名表示権及び同一性保持権は本件各カタログに及ばないというべきである。>

事件番号  平成11年(ネ)第5641号
事件名  著作権侵害損害賠償請求事件
裁判年月日  平成14年02月18日
裁判所名  東京高等裁判所 
判決データ:  CP-H11-ne-5641.pdf   CP-H11-ne-5641-1.pdf

(2) 複製の成否について
   ア 本件各作品の複製の成否を判断する前提として、まず、書の著作物としての特性について検討する。
     書は、一般に、文字及び書体の選択、文字の形、太細、方向、大きさ、全体の配置と構成、墨の濃淡と潤渇(にじみ、かすれを含む。以下、同じ。)などの表現形式を通じて、文字の形の独創性、線の美しさと微妙さ、文字群と余白の構成美、運筆の緩急と抑揚、墨色の冴えと変化、筆の勢い、ひいては作者の精神性までをも見る者に感得させる造形芸術であるとされている(甲14、15、17、18、乙20〜25、30、31、34、35参照)。他方、書は、本来的には情報伝達という実用的機能を担うものとして特定人の独占が許されない文字を素材として成り立っているという性格上、文字の基本的な形(字体、書体)による表現上の制約を伴うことは否定することができず、書として表現されているとしても、その字体や書体そのものに著作物性を見いだすことは一般的には困難であるから、書の著作物としての本質的な特徴、すなわち思想、感情の創作的な表現部分は、字体や書体のほか、これに付け加えられた書に特有の上記の美的要素に求めざるを得ない。そして、著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することであって、写真は再製の一手段ではあるが(著作権法2条1項15号)、書を写真により再製した場合に、その行為が美術の著作物としての書の複製に当たるといえるためには、一般人の通常の注意力を基準とした上、当該書の写真において、上記表現形式を通じ、単に字体や書体が再現されているにとどまらず、文字の形の独創性、線の美しさと微妙さ、文字群と余白の構成美、運筆の緩急と抑揚、墨色の冴えと変化、筆の勢いといった上記の美的要素を直接感得することができる程度に再現がされていることを要するものというべきである。
   イ このような観点から検討すると、本件各カタログ中の本件各作品部分は、上質紙に美麗な印刷でピントのぼけもなく比較的鮮明に写されているとはいえ、前記(1)ウ、エの紙面の大きさの対比から、本件各作品の現物のおおむね50分の1程度の大きさに縮小されていると推察されるものであって、「雪月花」、「吉祥」、「遊」の各文字は、縦が約5〜8o、横が約3〜5o程度の大きさで再現されているにすぎず、字体、書体や全体の構成は明確に認識することができるものの、墨の濃淡と潤渇等の表現形式までが再現されていると断定することは困難である。すなわち、この点については、本件各作品の現物が本件訴訟で証拠として提出されていないため、直接の厳密な比較は困難であるが、亡A自身が本件各作品を再現したという検甲1〜4を参考に検討してみると、例えば、本件作品A(雪月花)を再現したという検甲4の「雪」の1画目のわずかににじんだ濃い墨色での表現、同3画目の横線が右側でわずかにかすれ、切り返し部でいったん筆が止まって、左側に大きく筆を流している柔らかな崩し字の表現、「月」の1画目の起筆部分の繊細な筆の入り方、同2画目の力強い縦線の濃く太い線とその右に沿って看取できるわずかなかすれによる表現、「花」の草冠の2本の縦線のうち右側の「ノ」とその下の「一」の間にある微細な空げきによる筆の流れを示す表現等が、墨色の濃淡と潤渇といった表現形式から感得することができるのに対し、本件各カタログ中の本件各作品部分においても、また、検甲4を本件各カタログ中の本件各作品部分とほぼ同一の大きさに縮小したもの(甲19の比較図面)においても、こうした微妙な表現までは再現されていない。同様に、本件作品B(吉祥)を再現したという検甲3の「吉」の4画目に入る筆の勢い、「祥」の2本の縦線の肉太で直線的な筆の止め方の妙、本件作品C(遊)を再現したという検甲2及び本件作品D(遊)を再現したという検甲1の「遊」の字画中の「子」からしんにょうの起筆部分に至るまで一気に運筆して形成される流麗な崩し字の表現、かすれ痕を伴ったしんにょうの左から右に弧を描くような伸びやかな筆使いといった表現が、墨色の濃淡と潤渇等の表現形式から感得することができるのに対し、本件各カタログ中の本件各作品部分においても、また、検甲1〜3を本件各カタログ中の本件各作品部分とほぼ同一の大きさに縮小したもの(甲19の比較図面)においても、こうした微妙な表現までが再現されているとはいえない。
     そうすると、以上のような限定された範囲での再現しかされていない本件各カタログ中の本件各作品部分を一般人が通常の注意力をもって見た場合に、これを通じて、本件各作品が本来有していると考えられる線の美しさと微妙さ、運筆の緩急と抑揚、墨色の冴えと変化、筆の勢いといった美的要素を直接感得することは困難であるといわざるを得ない。なお、控訴人は、書に詳しくない控訴人が本件カタログ中に本件各作品が写されているのを偶然発見し、これが本件各作品であると認識した旨主張するが、ある書が特定の作者の特定の書であることを認識し得るかどうかということと、美術の著作物としての書の本質的な特徴を直接感得することができるかどうかということは、次元が異なるというべきであるから、上記の認定判断を左右するものではない。
     したがって、本件各カタログ中の本件各作品部分において、本件各作品の書の著作物としての本質的な特徴、すなわち思想、感情の創作的な表現部分が再現されているということはできず、本件各カタログに本件各作品が写された写真を掲載した被控訴人らの行為が、本件各作品の複製に当たるとはいえないというべきである。
   ウ 控訴人は、書の最も重要な要素は形、すなわち造形性であり、書の複製の成否の判断においても、本質的な要素は形であるところ、本件各カタログ中の本件各作品部分でも本件各作品の書の造形性が再現されている旨主張する。しかし、上記のとおり書が文字を素材とする造形芸術である以上、その著作物としての本質的な特徴としては、字体や書体に付加される美的要素を軽視することはできず、単に書の形が再現されていれば複製が成立すると解した場合には、字体や書体そのものに著作物性を肯定する結果にもなりかねない。そうすると、書の著作物としての本質的な特徴、すなわち思想、感情の創作的な表現部分については、上記のとおり解さざるを得ないというべきであり、控訴人の上記主張は採用することができない。
     また、控訴人は、墨の濃淡は拓本や篆書、隷書においては問題にならない旨主張するが、拓本による再製や篆書、隷書の複製一般の問題は、これらの複製が問題となっていない本件においては、上記判断に何ら消長を来すものではない。
  (3) 翻案の成否について
    言語の著作物の翻案とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる別の著作物を創作する行為をいう(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁)ところ、美術の著作物においても、この理を異にするものではないというべきであり、また、美術の著作物としての書の翻案の成否の判断に当たっても、書の著作物としての本質的特徴、すなわち思想、感情の創作的な表現部分のとらえ方については、上記(2)アに述べたところが妥当すると解すべきであるから、本件各カタログ中の本件各作品部分が、本件各作品の表現上の本質的な特徴の同一性を維持するものではなく、また、これに接する者がその表現上の本質的な特徴を直接感得することができないことは、前示(2)の判断に照らして明らかというべきである。
    そうすると、本件各カタログに本件各作品が写された写真を掲載した被控訴人らの行為は、本件各作品の翻案にも当たらないというべきである。
  (4) したがって、本件各作品に係る亡Aの著作権(複製権又は翻案権)の侵害に基づく控訴人の請求は理由がない。
 2 争点3(氏名表示権及び同一性保持権の侵害)について
   本件各カタログ中の本件各作品部分が本件各作品の著作物としての本質的な特徴、すなわち思想、感情の創作的な表現部分を有するものではなく、本件各カタログが本件各作品の複製物であるとも、その翻案に係る二次的著作物であるともいえないことは上記1のとおりであるから、亡Aの氏名表示権及び同一性保持権は本件各カタログに及ばないというべきである。
   したがって、本件各作品に係る亡Aの著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)の侵害に基づく控訴人の請求も理由がない。

      
    別紙目録1(一部抜粋)






ゼットベースボールカタログ事件

事件番号  平成13年(ワ)第8552号
事件名  損害賠償請求事件
裁判年月日  平成14年11月14日
裁判所名  大阪地方裁判所
判決データ:  CP-H13-wa-8552.pdf

ウ 以上の事実によれば、被告ウエイブは、Aに対し、本件写真は次年度版カタログ(「ゼットベースボールカタログ」のほか、その一部の分冊ないし一部を編集した分冊である「レプリカユニホームカタログ」、「ユニホームカタログ」、「グランドコートカタログ」を含む。)にも用いることがあることを前提として本件写真撮影の仕事を依頼し、Aは、本件写真が複数回使用されるものであることを認識し、本件写真の使用を当該年度のみの1回に限って欲しいなどと要請することなく、本件写真撮影の仕事を受注し、その後も被告ウエイブとAとの間で、本件写真の複数回使用を前提として撮影業務が続けられ、撮影料が支払われていったのであり、写真についても、当該年度のカタログ作成後も被告ウエイブがポジフィルムをすべて管理し、Aに返還していないのであるから、被告ウエイブとAとの本件写真撮影の契約は、次年度版以降の本件カタログにも使用することを前提とするものであったというべきである。
 そして、原告は、被告ウエイブに対し、平成8年夏ころから、本件写真の使用は同一媒体における1回のみの使用とすることや、使用済みのオリジナル(ポジフィルム)を返却すること等の要請を見積書、請求書等の下部に極めて小さく記載して送付しているが、このような記載は、文面を相当注意して見ないと気付かないようなものであり、通常人が写真の再使用料の支払請求をしていると理解できる態様でないにもかかわらず、原告はそうした記載の趣旨を何ら説明していないから、このような一見して気付かないような記載をしたことをもって、原告が、被告ウエイブに対し、同一媒体における1回のみの使用に限定するように上記の契約内容を変更する旨の申入れをしたとすることはできない。
 また、Aは、平成10年夏ころに、Dに対し、本件写真を次年度版以降のカタログに使用する場合には、別途使用料をもらいたいとの申入れをしているが、被告ウエイブ代表者のDがこれを受け入れるような言辞、態度を示さず、暗に発注の見直しを示唆するような態度を示したことから、Aは、上記の契約内容の変更に当たる上記の申入れに固執することなく、従前どおり本件写真の撮影業務を継続したものであり、結局、Aは、平成10年夏ころ以後も、次年度版以降の本件カタログにも使用することを前提とする契約のもとで、本件写真の撮影を継続したものというべきである。
 なお、被告らは、原告から本件写真の著作権を譲り受けたとも主張するが、上記認定の事実によっても当該事実を認めるには足りず、その他、被告らが原告から本件写真の著作権を譲り受けたことを認めるに足りる証拠はない。

(中略)

(ウ) 上記事実によれば、被告ウエイブは、ヒットユニオンのカタログ用写真を雑誌広告用写真に使用したことの料金を別途支払ったことや、カタログの分冊を制作する際に新たに撮影した写真の撮影料を支払ったことは認められるものの、被告ウエイブがヒットユニオンのカタログに写真を複数回使用したことについて別途使用料を支払ったとの原告主張の事実を裏付けるものではなく、他にこれを認めるに足りる証拠もない。
エ 原告は、出版広告等の業界では写真の継続反復使用について極めて慎重であり、特にモデルを用いた写真についてはモデルの肖像権の問題とも関連し業界慣行としても1度限りの使用が常識的であると主張する。
 甲8によれば、モデルクラブの業界団体である日本モデルエージェンシー協会は、モデルを撮影した写真等は、事前に期間や媒体について相談を受けない限り、「1媒体を通常の1クール・3か月以内、又は1回のみの使用」に限定する旨のルールを定めていることが認められる。
 しかし、モデルの肖像権保護の要請からその写真を原則として1度しか使用できないことをモデルクラブの業界団体が定めているとしても、そのことから直ちに、原告と被告ウエイブとの間において、本件写真を次年度版以降のカタログに掲載することが許されないと解さなければならないものではない。また、原告及び被告ウエイブの各代表者本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、本件写真撮影においてモデル派遣を依頼したモデルクラブは、原告及び被告ウエイブに対し、次年度版以降のカタログにモデル写真を掲載していることについて苦情を申し入れてはおらず、被告ウエイブが当該モデルクラブに確認したところ、次年度版以降のカタログにモデル写真を掲載することは問題がないとの回答を得ていることが認められる。
 また、原告が主張するように、出版広告等の業界では写真の継続反復使用について極めて慎重であるとしても、複数年度のカタログに同じ商品写真を掲載することが予定されているようなカタログ掲載用の写真撮影を依頼した場合に、カタログに掲載した年度ごとに別途写真使用料を支払うような業界慣行があることを認めるに足りる証拠もない。

(3) そうすると、原告と被告ウエイブとの間における本件カタログ用写真の撮影契約は、本件写真を次年度版以降の本件カタログにも使用することを前提とするものであり、本件写真はそうした契約条件に基づいて撮影されたものであるから、被告ウエイブ及び被告ゼットが本件写真を次年度版以降の本件カタログに掲載したことは原告の本件写真の著作権(複製権)を侵害するものとはいえない。





審決取消請求事件(包装用容器の意匠)

事件番号  平成19年(行ケ)第10209号等
事件名  審決取消請求事件
裁判年月日  平成19年12月26日
裁判所名  知的財産高等裁判所
判決データ:  DE-H19-Gke-10209.pdf    DE-H19-Gke-10209-1.pdf

 ウ本願全体意匠と意匠3とを対比すると、全体を筒型の容器の口部に塗布具部を設けたものとする包装用容器であって、同筒体の上約半分の部分を、側面視略直角三角形状であり、前方を約60度の傾斜角度で、上方に向けて漸次絞り上げ、その先端に容器本体の径よりやや小径で短円筒形の「口部」を約60度の傾斜角度で形成し、同口部に、底部を開放した円盤状で、周側面に、滑り止め用ギザを形成させ、上面を緩やかな湾曲面に形成した態様の「キャップ」を被せた態様である点において共通する。
 しかし、本願全体意匠と意匠3とは、@前者が、「容器本体」の断面形状につき、前方を狭くし、後方を広くした長円形状の丸い筒体としているのに対して、後者は、筒体であることは推認されるものの、その正確な断面形状は不明であること、A「キャップ」の形状について、前者が、底部を開放した円盤状で、周側面全体にわたり、底部方向から2分の1部分のみに、滑り止め用ギザを形成させ、「容器本体の口部に連続する部分」と「キャップ」との径の比率は、約1対1.7であり、「キャップ」の縦(頭頂から底までの長さ)と横(直径)の比率は、約1対2であり、横長の印象を与えるのに対し、後者が、円盤状で周側面のほぼ全体に滑り止め用ギザを形成させ、「容器本体の口部に連続する部分」と「キャップ」との径の比率は、約1対1であり、そのため、容器本体と「キャップ」に至る段差は、ほとんど看取できず、また、「キャップ」の縦(頭頂から底までの長さ)と横(直径)の比率は、約1対1.2であり、縦長の印象を与えること、B側面視における「キャップ」と容器本体の関係について、前者は、「キャップ」の先端部において、容器本体部前面の延長線より前方に突き出していないのに対し、後者は、「キャップ」の先端部は、容器本体部前面を結ぶ直線の延長線より前方に突き出している点において、大きく異なる。

(中略)

(3) 本願全体意匠の特徴及び創作容易性ア本願全体意匠は、「キャップ」の径を口部(正確には、容器本体の口部に連続する部分)の径に対して1.7倍として、径方向に大きく拡大させ、また、「キャップ」の縦と横の直径の比率を約1対2として、径方向に大きく拡げて、塗布具部表面の面積を広く確保している点で特徴があるが、そのような特徴があるとともに、「キャップ」の縦の長さを極力短く抑えていること、滑り止め用縦ギザを「キャップ」の周側面の底部方向から2分の1部分のみに施していること、「キャップ」上面は緩やかな丸みを帯びた形状としていること、「キャップ」の径を容器本体の前後幅とほぼ同じ長さとしていることなどの点において、「キャップ」を径方向に大きく拡大させたことに由来する欠点、すなわち、頭部が目立ちすぎて、威圧感を与えたり、容器形状として異様な印象を与えたり、容器との調和を乱したりするなどの欠点を解消させ、均衡を保つための美観上の工夫が様々施されており、そのような点でも特徴があるといえる。
 イ意匠1及び意匠2によれば、包装用容器の分野において、容器本体口部よりも塗布具部の径が大きな包装用容器が、本願(2)の出願前より公然知られていたことが認められる。
 しかし、本願全体意匠と意匠3を対比すると、前記(1)ウのとおりの美観上の相違があり、また、本願全体意匠は上記アのとおりの各特徴を備えている点に照らすならば、本願全体意匠は、多様なデザイン面での選択肢から、創意工夫を施して創作したものであるから、意匠3を基礎として、意匠1及び意匠2(容器本体口部よりも塗布具部の径が大きな公知の包装用容器に係る意匠)を適用することによって、本願全体意匠を容易に創作することができたはいえない。
(4) 小括
 以上のとおりであるから、審決(2)が、意匠1及び意匠2から、包装用容器の分野において、容器本体口部よりも塗布具部の径が大きな包装用容器は、本願(2)の出願前に公然知られた形状であり、意匠3を基礎として、塗布具部の径をやや大きくして、本願全体意匠とすることは、容易に創作することができたと判断したことには誤りがある。





審決取消請求事件(意匠法3条1項と3条2項)

事件番号  昭和45年(行ツ)第45号
事件名  審決取消請求事件
裁判年月日  昭和49年03月19日
法廷名  最高裁判所第三小法廷
判決データ:  DE-S45-Gtsu-45.pdf

 思うに、意匠は物品と一体をなすものであるから、登録出願前に日本国内若しくは外国において公然知られた意匠又は登録出願前に日本国内若しくは外国において頒布された刊行物に記載された意匠と同一又は類似の意匠であることを理由として、法三条一項により登録を拒絶するためには、まずその意匠にかかる物品が同一又は類似であることを必要とし、更に、意匠自体においても同一又は類似と認められるものでなければならない。しかし、同条二項は、その規定から明らかなとおり、同条一項が具体的な物品と結びついたものとしての意匠の同一又は類似を問題とするのとは観点を異にし、物品との関係を離れた抽象的なモチーフとして日本国内において広く知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合を基準として、それから当業者が容易に創作することができた意匠でないことを登録要件としたものであり、そのモチーフの結びつく物品の異同類否はなんら問題とされていない。このことを同条一項三号と同条二項との関係について更にふえんすれば、同条一項三号は、意匠権の効力が、登録意匠に類似する意匠すなわち登録意匠にかかる物品と同一又は類似の物品につき一般需要者に対して登録意匠と類似の美感を生ぜしめる意匠にも、及ぶものとされている(法二三条)ところから、右のような物品の意匠について一般需要者の立場からみた美感の類否を問題とするのに対し、三条二項は、物品の同一又は類似という制限をはずし、社会的に広く知られたモチーフを基準として、当業者の立場からみた意匠の着想の新しさないし独創性を問題とするものであって、両者は考え方の基礎を異にする規定であると解される。したがって、同一又は類似の物品に関する意匠相互間においても、その意匠的効果の類否による同条一項三号の類似性の判断と、その一方の意匠の形状、模様、色彩等に基づいて当業者が容易に他方の意匠を創作することができたかどうかという同条二項の創作容易性の判断とは必ずしも一致するものではなく、類似意匠であって、しかも同条二項の創作が容易な意匠にも当たると認められる場合があると同時に、意匠的効果が異なるため類似意匠とはいえないが、同条二項の創作容易性は認められるという場合もありうべく、ただ、前者の場合には、同条二項かっこ書により「同条一項三号の規定のみを適用して登録を拒絶すれば足りるものとされているのである。
 もっとも、法四九条三号は、「意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が前二号に掲げる意匠(登録出願前に外国において公然知られた意匠及び登録出願前に外国において頒布された刊行物に記載された意匠)に基いて容易に意匠の創作をすることができた場合における意匠」について、その登録無効審判の請求期間を制限しており、これに対応する登録無効事由を定めた実体規定を強いてあげるとすれば、三条一項三号をおいてほかにはないが、このことから直ちに、同条一項三号に定める「類似」の意味を創作の容易と同義に解し、同条一項三号は、同条一項一号及び二号に掲げる意匠に基づき当業者が容易に創作することができた意匠について登録拒絶を定めたものであると解することは、上記の説示に照らし相当でない。
 してみると、右と異なり、同一又は類似の物品の意匠については同条二項を適用する余地がないとした原審の判断には、同条の解釈を誤った違法があるというべきである。





審決取消請求事件(参考図に基づく分割出願)

事件番号  平成18年(行ケ)第10136号
事件名  審決取消請求事件
裁判年月日  平成18年08月24日
裁判所名  知的財産高等裁判所

判決データ:  DE-H18-Gke-10136.pdf

 意匠法10条の2第1項の「二以上の意匠を包含する意匠登録出願」か否かは、同法24条と同様、願書の記載及び願書に添付した図面に記載され又は願書に添付した写真、ひな形若しくは見本により現された意匠に基づいて確定されるべきものであり、必要があれば、展開図、断面図、切断部端面図、拡大図、斜視図その他の必要な図、使用の状態を示した図その他の参考図をも参照することになる。
 したがって、展開図、断面図、切断部端面図、拡大図、斜視図その他の必要な図、使用の状態を示した図その他の参考図中に、「意匠登録を受けようとする意匠」とは別の意匠が記載されているとしても、「二以上の意匠を包含する意匠登録出願」か否かにおいて検討されるべき対象になるものではない。





部分意匠の類否判断

<特許庁の拒絶審決を取消>

事件番号  平成18年(行ケ)第10317号
事件名  審決取消請求事件
裁判年月日  平成19年01月31日
裁判所名  知的財産高等裁判所
判決データ:  DE-H18-Gke-10317.pdf

 「物品の部分」の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」ということがある。)であって、視覚を通じて美感を起こさせるものも、「意匠」(意匠法2条1項)であり、部分意匠として、意匠登録を受けることができる。
部分意匠においては、物品全体の形状等に係る意匠と同様、意匠登録出願の願書には、原則として、意匠登録を受けようとする意匠を記載した図面を添付する必要があり(意匠法6条1項柱書)、願書に添付すべき図面は、意匠法施行規則の様式第6により作成しなければならない(同規則3条)。そして、上記様式第6において、物品の部分について意匠登録を受けようとする場合は、一組の図面において、意匠に係る物品のうち、「意匠登録を受けようとする部分」を実線で描き、「その他の部分」を破線で描く等により意匠登録を受けようとする部分を特定し、かつ、その特定する方法を願書の「意匠の説明」欄に記載するものとし(備考11)、実線及び破線の太さ(備考5)などが定められている。。
 そして、意匠登録を受けることができる物品については、意匠法施行規則7条において、別表第1の物品の区分が定められているものの、物品において、意匠登録を受けることができる「部分」についての規定はなく、出願人は、一定のまとまりがあり、視覚を通じて美感を起こさせる形状等からなる部分については、願書の「意匠の説明」欄の記載及び添付図面を用いて(同規則3条所定の様式第6の備考11参照)、自ら、意匠登録を受けようとする部分を定めることができると解される。
 ここで、部分意匠制度は、破線で示された物品全体の形態について、同一又は類似の物品の意匠と異なるところがあっても、部分意匠に係る部分の意匠と同一又は類似の場合に、登録を受けた部分意匠を保護しようとするものなのであるから、破線で示された部分の形状等が、部分意匠の認定において、意匠を構成するものとして、直接問題とされるものではない。
 しかし、物品全体の意匠は、「物品」の形状等の外観に関するものであり(意匠法2条1項)、一定の機能及び用途を有する「物品」を離れての意匠はあり得ないところ、「物品の部分」の形状等の外観に関する部分意匠においても同様であると解されるから、部分意匠においては、部分意匠に係る物品とともに、物品の有する機能及び用途との関係において、意匠登録を受けようとする部分がどのような機能及び用途を有するものであるかが確定されなければならない。そして、そのように意匠登録を受けようとする部分の機能及び用途を確定するに当たっては、破線によって具体的に示された形状等を参酌して定めるほかはない。また、意匠登録を受けようとする部分が、物品全体の形態との関係において、どこに位置し、どのような大きさを有し、物品全体に対しどのような割合を示す大きさであるか(以下、これらの位置、大きさ、範囲を単に「位置等」ともいう。)は、後記2(2)のとおり、意匠登録を受けようとする部分の形状等と並んで部分意匠の類否判断に対して影響を及ぼすものであるといえるころ、そのような位置等は、破線によって具体的に示された形状等を参酌して定めるほかはない。部分意匠は、物品の部分であって、意匠登録を受けようとする部分だけで完結するものではなく、破線によって示された形状等は、それ自体は意匠を構成するものではないが、意匠登録を受けようとする部分がどのような用途及び機能を有するといえるものであるかを定めるとともに、その位置等を事実上画する機能を有するものである。
 そして、部分意匠の性質上、破線によって具体的に示される形状等は、意匠登録を受けようとする部分を表すため、当該物品におけるありふれた形状等を示す以上の意味がない場合もあれば、当該物品における特定の形状等を示して、その特定の形状等の下における意匠について、意匠登録を受けようとしている場合もあり、部分意匠において、意匠登録を受けようとする部分の位置等については、願書及びその添付図面等の記載並びに意匠登録を受けようとする部分の性質等を総合的に考慮して決すべきである。
(中略)
 本件出願において、本願実線部分自体は、平坦部ではあるが、上記アのとおり、本件出願の願書添付の図面における、意匠登録を受けようとする部分と他の部分との境界を示す一点鎖線の一方は、凹陥部底面の底面の平坦部が開始する位置に示され、A−A線切断部端面図において、ディスク部の略中央部分の、ボス部を除いた凹陥部底面の平坦部がすべて実線で示されている等の記載に照らせば、原告は、プーリーのディスク部の形状にかかわらず、プーリーのディスク部の平坦面に係る形状等について意匠登録を受けようとするものではなく、ディスク部に凹陥部を有するプーリーにおける、ディスク部の凹陥部の底面の平坦部の形状等について意匠登録を受けようとしているものと合理的に解釈できる。
(中略)
 一方、本件相当部分についてみると、甲2公報に所載のプーリーは、中心孔近辺のボス部、外側周面のリム部及び円環状のディスク部を有するとともに、同ディスク部が等間隔で位置する四個のおむすび状の透孔を有するが、ディスク部に凹陥部を有さず、ディスク部全面が平坦である。
 したがって、引用意匠においては、本件ドーナツ状平坦部分に相当するとされる部分は、ディスク部の略中央部分であって、四箇所の透孔のボス部側の四箇所の略弧状の切り欠き部を有するドーナツ状平坦部分であり、そのドーナツ状平坦部分は、ディスク部に凹陥部を有しないプーリーにおいて、全面が平坦なディスク部の略中央部分に位置するものである。
 以上のとおり、本願実線部分は、ディスク部に凹陥部を有するプーリーにおいて、ディスク部の凹陥部の底面に位置するものであるのに対し、本件相当部分は、ディスク部に凹陥部を有しないプーリーにおいて、全面が平坦なディスク部の略中央部分に位置するものであるから、本願実線部分と本件相当部分の位置には、差異があるというべきであり、本願実線部分と本件相当部分の位置が共通するとした審決の認定判断は誤りであるというほかはなく、この誤りは、後記2のとおり、審決の結論に影響を及ぼすものである。
(中略)
 被告は、部分意匠についての類否判断は、基本的には、通常意匠の類否判断と異なるところはなく、本願実線部分と本件相当部分との形態の対比、及び、本願意匠と引用意匠の類否の判断に与える影響の評価についても同様であるが、本願実線部分以外の部分と本件相当部分以外の部分については、その用途及び機能と、当該物品全体の形態に対する、本願実線部分と本件相当部分とのそれぞれの相対的な位置、大きさ、範囲が、対比できる程度であれば足りるものである旨主張する。
 確かに、部分意匠の類否判断において、意匠登録を受けようとする部分の位置の差異を必要以上に考慮することは、実質的に、破線部分の形状等を部分意匠の内容に取り込んで類否判断等をすることにもなりかねず、部分意匠制度の趣旨を没却することになるものであるが、本件においては、前記(3)のとおり、本願実線部分は、その内容に照らし、それと相いれない、ディスク部に凹陥部を有しないプーリーに位置するものを予定していないと解するのが相当であって、本願実線部部と本件相当部分の位置の差異は、本願意匠と引用意匠に異なった美感をもたらし、その類否判断に影響を及ぼすものであるから、被告の主張は採用できない。





「ビールピッチャー」審決取消請求事件

<本願意匠と引用意匠とは類似するとはいえず、意匠法3条1項3号に該当しない。>

事件番号  平成20年(行ケ)第10251号
事件名  審決取消請求事件
裁判年月日  平成20年12月25日
裁判所名  知的財産高等裁判所 
判決データ:  DE-H20-Gke-10251.pdf

第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯
 原告は、意匠に係る物品を「ビールピッチャー」とし、その部分につき、平成18年7月19日、意匠登録出願(以下「本件意匠登録出願」という。)をしたが、平成19年1月12日付けの拒絶理由通知を受け(甲17)、同年7月19日付けの拒絶査定を受けた(甲19)。

(中略)

3 審決の内容
(1) 別紙審決書の写しのとおりである。要するに、本願意匠は、意匠に係る物品を「ビール用ピッチャー」とする意匠登録第1187522号の意匠(甲10。別紙図面第2)のうち本願意匠に対応する部分(以下この部分を「引用意匠」という。)に類似するから、意匠法3条1項3号の意匠に該当する、とするものである。

(中略)

イ 類否の判断
 上記の認定に基づいて、本願意匠と引用意匠の類否を判断する。
 本願意匠は、折り返し部及び注ぎ口ともに基本的に直線で形成され、全体の縦が長く、注ぎ口を大きくかつ深く、正面視において二重略V字形状を有し、これらの特徴を総合すると規則的であるが、シャープな印象を与える形状ということができる。
 これに対して、引用意匠は、注ぎ口の側方視を除いて折り返し部及び注ぎ口ともに基本的に曲線で形成され、全体の縦の長さが横の長さに比して短く、注ぎ口が小さくかつ浅く、正面視において円弧形状を示し、平面視において、注ぎ口は、手前から先端に進むに従い、曲率半径を変化させ、曲線が多用され、これらの特徴を総合すると、不規則かつ複雑であるが、全体として柔軟で暖かな印象を与えるものといえる。
(3)上記によれば、本願意匠と引用意匠とは、意匠に係る物品がいずれもビールピッチャーであり、いずれもその構造が内容器と外容器の二重構造を有するうちの内容器に関するものである他、注ぎ口及び折り返し部を有するという基本的な構成態様において共通する点を有するが、具体的な注ぎ口及び折り返し部の形状態様において、看者に異なる美感を与えているものというべきである。したがって、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。
(4)被告の主張に対し
 被告は、@本願意匠の物品分野において、内容器本体の外側面の底面周縁より上方の側方視態様を直線状としたものや、A外側注ぎ口の上側を側方視水平状とし、突端を平面視やや角張って形成し、中央の折り曲げ部の傾斜を急傾斜とした態様のものは、甲2、11ないし14、乙2ないし8にみられるようにありふれたものであり、看者の注意を惹くものではないと主張する。
 しかし、被告の主張は、以下のとおり理由がない。
 すなわち、注ぎ口の上記態様は、側方視において看者の注意を惹くものであること、上記公知意匠は本願意匠と異なり、@内容器と外容器との二重構造をなすものではないこと(甲11、13、14、乙5)、A注ぎ口の端部が曲線からなるもの(甲11)、略台形状からなるもの(甲12)であること、B注ぎ口の下端が折り返し部の下部と接していないこと(甲2、12、乙2)、C注ぎ口の下斜め線が直線となっていないこと(甲14)、D注ぎ口の輪郭が正面視略V字形状を有するとしても、その外側に注ぎ口内部の輪郭線が示されて二重略V字形状を有するものではないこと(乙3ないし8)からすれば、本願意匠の一部について公知のものが含まれるとしても、それをもって本願意匠と引用意匠との類否の判断に影響を及ぼすものとはいえない。
2 結論
 以上に検討したところによれば、本願意匠と引用意匠とは類似するとはいえず、意匠法3条1項3号に該当しないから、審決の判断は誤りであり、原告の主張する取消事由には理由がある。

本願意匠
  



引用意匠






「腕時計側」審決取消事件

事件番号 平成20年(行ケ)第10184号
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年11月26日
裁判所名 知的財産高等裁判所
判決データ:  DE-H20-Gke-10184.pdf

       主  文
1 特許庁が不服2007−15948号事件について平成20年1月9日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

第2 事案の概要
1 本件は、原告が、意匠に係る物品を「腕時計側」とする後記意匠登録出願をしたところ、拒絶査定を受けたので、これを不服として審判請求をしたが、特許庁から請求不成立の審決を受けたことから、その取消しを求めた事案である。
2 争点は、別紙第1記載の本願意匠が、内国雑誌「ラピタ」2004年(平成16年)7月1日発行7号79頁所載の腕時計における「腕時計側」の別紙第2記載の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HA16010913号、以下「引用意匠」という。)と類似するか(意匠法3条1項3号)、である。

(判旨)
 本願意匠と引用意匠のガード部に関する具体的態様は、本願意匠においては、上側ガード部と下側ガード部から突出するように、それぞれ押しボタン部が設けられているのに対し、引用意匠においては、上側ガード部と下側ガード部が各中間位置において切り欠かれた部分を有し、該切欠部分にそれぞれ押しボタン部が設けられている点が相違し、本願意匠のガード部は、竜頭をガードしているということができるが、押しボタン部をガードしているということはできないのに対し、引用意匠ガード部は、竜頭とともに押しボタン部をガードしているということができる。
 また、本願意匠と引用意匠は、「本願意匠のガード部は、押しボタン部が配置される領域が前面側に盛り上がるように形成され、該盛り上がり部分と周囲部との間は傾斜面状とされているのに対し、引用意匠のガード部は前面が平面状とされている点」でも相違する。

(中略)

 本願意匠においては、上面部の8個の固定ネジ部の各ネジは、内側に六角形状の凹部を設けた円筒状ネジであって、各々外側に開口したU字状の取付け孔部を施して取り付けられているのに対し、引用発明においては、上面部の8個の固定ネジ部の各ネジは、六角形のネジであって、リング状部上面に埋め込むように略面一状に取り付けられているから、溝様の一本線模様の点で共通するからといって、本願意匠と引用意匠が類似しないとの上記認定を左右するものではない。





謝罪広告等請求控訴事件(ゴルフ用ボールマーカー事件)

事件番号  平成18年(ネ)第10084号
事件名  謝罪広告等請求控訴事件
裁判年月日  平成19年03月27日
裁判所名  知的財産高等裁判所 
判決データ:  DE-H18-ne-10084.pdf

 被控訴人製品意匠と本件登録意匠とは、基本的構成を同じくするものの、要部の構成において相違しており、その相違は、ボールマーカーの上面全体に及んでいて、微小なものとはいえないから、被控訴人製品意匠は、全体として本件登録意匠とは美感を異にするというべきである。


原審判決データ:  DE-H18-wa-13406.pdf   DE-H18-wa-13406-1.pdf







    意匠登録第1217691号  平面図





カーテンランナー意匠権侵害差止等請求事件

<意匠権の侵害を否定。不正競争防止法第2条第1項第1号違反なし。不正競争防止法第2条第1項第3号違反なし。>

事件番号  平成18年(ワ)第14144号
事件名  意匠権侵害差止等請求事件
裁判年月日  平成19年12月11日
裁判所名  大阪地方裁判所  
判決データ:  DE-H18-wa-14144.pdf   DE-H18-wa-14144-1.pdf

 まず本件登録意匠とイ号製品に係る意匠との共通点であるランナー部及び支軸部の構成は、前記のとおりありふれた構成であって、特段需要者の注意を惹くとはいえない。
 他方、相違点について見ると、まず本件登録意匠では、支軸部を従来のカーテンランナーの支軸部よりも大きくして、そこに直接フックを挿通させているのに対し、イ号製品の意匠では、支軸部に連結環を挿通させる点は従来のカーテンランナーと同じであり、その連結環にフックを取り付けている。これにより、イ号製品の意匠は、従来のありふれたカーテンランナーにフックを取り付けたものとの印象を生じるのに対し、本件登録意匠では、フックが連結環を介さずに直接支軸部に挿通されていることから、ランナー部とフック部との連結に、従来にない一体的な印象が生じると認められる。
 また、フックについて見ると、本件登録意匠のC字状縦長フックは、世上一般に「カラビナ」として知られる連結具の周知の形態(本件登録意匠の意匠登録出願前に発行された特開平10−331833号公開特許公報[乙7]の図4)をフック部に用いたものであると看取されるのに対し、イ号製品の意匠では、開放部を有するフックである点で本件登録意匠のC字状縦長フックと共通するが、断面略四角状で、上辺を水平状とし、側辺から上辺にかけてJ字状とし、J字状の先端と上辺との間に開放部が設けられている点で相違している。この相違点は、フックの全体的形状に係るものであり、フックの大きさも相まって、一見して目に付くものであるといえる。
 以上のとおり、本件登録意匠とイ号製品の意匠とは、その共通する点はありふれた構成で、需要者の注意を惹かないのに対し、その相違する点は、ランナー部とフック部とを組み合わせる上での具体的構成という、本件登録意匠の特徴点に関するものであるから、全体として相違点が共通点を凌駕し、イ号製品の意匠は、本件登録意匠とは美感を異にするというべきである。





「衣料用ハンガー」事件

<原告の請求を棄却。→非侵害。>

事件番号  平成20年(ワ)第1089号
事件名  意匠権侵害差止等請求事件
裁判年月日  平成20年10月30日
裁判所名  東京地方裁判所
判決データ:  DE-H20-wa-1089.pdf

第2 事案の概要
 本件は、原告が被告に対し、被告の販売等に係る製品(衣料用ハンガー)が原告の有する意匠権を侵害しているとして、意匠法37条1項、2項に基づき上記製品の輸入、製造、譲渡、展示の差止め及び廃棄を求めるとともに、民法709条に基づく損害賠償金292万円及びこれに対する不法行為の後である平成20年1月25日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1 前提となる事実
(1)当事者
 原告は、アパレルディスプレイ用ハンガーの企画、製造、販売を業とする株式会社である。(争いのない事実)
 被告は、業務用ハンガー、家庭用ハンガー及び各種家庭用品の企画、製造、販売を業とする株式会社である。(争いのない事実)
(2)原告の意匠権
 原告は、次の意匠権(以下「本件意匠権」といい、その登録意匠を「本件意匠」という。)を有しており、その意匠公報に掲載された図面は、別紙意匠図面のとおりである。(争いのない事実、甲1の1・3)
意匠登録  第1050083号
出願番号  意願平10−29973号
出願日   平成10年10月16日
登録日   平成11年6月18日
意匠に係る物品  衣料用ハンガー
 なお、本件意匠には、次の類似意匠(平成10年法律第51号による改正前の昭和34年法律第125号意匠法10条、22条参照)が登録されており、その意匠公報に掲載された図面は、別紙類似意匠図面のとおりである。
(甲1の2・3、弁論の全趣旨)
類似意匠登録第1号
出願番号  意願平10−29974号
出願日   平成10年10月16日
登録日   平成11年6月18日
意匠に係る物品  衣料用ハンガー

(判旨)
 本件意匠と被告意匠とを対比した本件意匠の要部を含む全体の差異点については、次のとおりである。
ア)基本的構成態様
 本件意匠では、ハンガー本体の首部の正面側に半円状の薄板がワイヤー状の線の上辺に懸装されるのに対し、被告意匠では、そのような薄板は取り付けられていない。

(イ)具体的構成態様
a 本件意匠では、ハンガー本体の首部の台形を形成する上辺と左右各辺との寸法比がおおむね1.6:1であって、上辺と左右各辺との交点における左右各辺の角度が鉛直方向からみて約20度である(正面側及び背面側)のに対し、被告意匠では、ハンガー本体の首部5の台形を形成する上辺と左右各辺との寸法比がおおむね2:1であって、上辺と左右各辺との交点における左右各辺の角度が鉛直方向からみて約30度である(正面側及び背面側)。
b 本件意匠では、首部の正面側の上辺のワイヤー状の線に懸装された半円状の薄板について、その直径が首部の上辺と同一寸法かつ平行であって、円弧が下方を向いているのに対し、被告意匠では、そのような薄板は取り付けられていない。
c 本件意匠では、先端部が鉛直方向からみて約20度の角度をなす(正面側及び背面側)のに対し、被告意匠では、先端部7が鉛直方向からみて約50度の角度をなす(正面側及び背面側)。
オまとめ
 上記エの本件意匠と被告意匠との差異点のうち、本件意匠では、首部の正面側の上辺のワイヤー状の線に半円状の薄板が取り付けられているのに対し、被告意匠において、首部5の正面側に本件意匠のような薄板が取り付けられていないという点において、被告意匠は、看者に対して本件意匠と異なる美感を与えるものというべきである。
 そして、上記エの本件意匠と被告意匠との共通点のうち、吊部において、フック部及び吊下軸部を備え、ハンガー本体において、首部、肩支持部、先端部を備え、首部が中央に位置して上部に突出し、肩支持部が首部の両側に連なって斜め下方向に直線状に延在し、先端部が肩支持部に連なって肩支持部を下方に折り曲げたように延在する直線状であるとの基本的構成態様は、乙1ないし4意匠にも共通してみられる形状であること、首部が上部に台形状に突出しているとの形状は、乙3意匠にもみられる形状であること、吊部における円筒状の軸支持部は、ハンガー本体の全体の大きさと対比して、特に際立つ存在ではなく、また、その形状が乙4意匠にもみられるものであることに照らすと、上記の共通点は、上記の首部の薄板が欠如するとの差異点を凌駕するほどの影響を看者に及ぼすものとみることはできない。その余の共通点についても、上記の差異点を凌駕するに足るものということはできない。
 以上のとおりであるから、本件意匠と被告意匠とは、相互の共通点の存在にかかわらず、全体として、看者に対して異なる美感を与えるものであると認められる。


       本件類似意匠  登録第1050083号の1                       被告製品1





「減速機付きモーター」意匠権侵害差止等請求事件

<控訴棄却→非侵害。>

事件番号  平成15年(ネ)第1119号
事件名  意匠権侵害差止等請求控訴事件
裁判年月日  平成15年06月30日
裁判所名  東京高等裁判所
判決データ:  DE-H15-ne-1119.pdf

(3) 前記(1)認定のとおり、本件登録意匠に係る物品と被控訴人製品の物品とは、異なるものであるし、また、前記(2)認定の本件登録意匠と被控訴人製品全体の意匠の共通点と相違点によれば、両者の構成態様は、@被控訴人製品の全体の構成態様が、第1のケーシング(減速機部分)のみならず、その直径と略同一の直径であり、その長さの約2倍の長さである第2のケーシングと連結されたものである点、A被控訴人製品の全体の構成態様においては、本件登録意匠の要部である前記ケーシングのモーター側端の具体的な形状(膨出部の背面視における形状全体)が外部から認識できない点において、大きく異なっているものといわざるを得ないから、被控訴人製品中の第1のケーシングの基本的構成態様や具体的構成態様の一部が本件登録意匠のそれらと共通するものであるという前記共通点を十分参酌しても、本件登録意匠と被控訴人製品の意匠は、全体として、看者に異なる美観を与えるものというべきであり、両者が類似しているということは到底できない。
(4) これに対し、控訴人は、被控訴人製品のモーター部分と減速機部分は、ねじにより着脱可能に取り付けられ、減速機部分の膨出部の存在により取付部分に僅かな間隙が形成されているため、減速機部分は独立して認識されるものであるから、本件登録意匠との類否判断の対象となるべきものは、被控訴人製品の減速機部分である旨主張し、また、部分意匠制度が導入されたことを考慮すると、「独立して取引される物品の意匠を保護対象とする」ことの根拠は明らかでないし、さらに、仮に、そのような解釈に立っても、これは「物品が独立して取引されている場合に限り保護を与える」ことと同一ではなく、意匠法が創作保護法であることを前提とすると、当該物品を内製さえすれば意匠の創作を冒用しても許されるというような結論は不当である旨主張する。
 しかしながら、意匠の保護は、最終的には産業の発達に寄与することを目的とするものであるから(意匠法1条)、意匠保護の根拠は、当該意匠に係る物品が流通過程に置かれ取引の対象とされる場合において、取引者、需要者が当該意匠に係る物品を混同し、誤って物品を購入することを防止すると同時に、上記取引者等の混同を招く行為を規制することにより意匠権者の物品流通市場において保護されるべき地位を確保することにあると解すべきである。そうすると、意匠権侵害の有無の判断に際しては、流通過程に置かれた具体的な物品が対象となるものというべきである。そして、本件においては、被控訴人が被控訴人製品を減速機部分とモーター部分とが一体のものとして製造販売していることは当事者間に争いがないし、前記のとおり、被控訴人製品の減速機部分は、ねじによりモーター部分と固定されているものであるから、結局、被控訴人製品において減速機部分は減速機付きモーターという物品の一構成部分にすぎないというべきである。したがって、被控訴人製品の減速機部分のみを切り離して本件登録意匠との類否判断の対象とすることはできない筋合いである。
(5) また、控訴人は、意匠法は意匠の持つ「形態価値」を保護するものであり、「形態価値」を保護するためには保護されるべき意匠が物品の流通過程で見えるかどうかは問題ではなく、モーターと減速機を結合させる「組み立て場面」と、減速機付きモーターとして「使用される場面」に注目しなければならない旨主張し、また、意匠保護の根拠は創作の保護であると解すべきであり、これを前提とすると、自己の商品に他人の意匠の創作をそのまま冒用するような行為は、たとえ最終的な製品において他人の意匠が外部から認識できなくても、許容されるべきではないから、意匠権侵害の判断に当たっては、外部から認識できない物品の隠れた形状も考慮すべきである旨主張する。
 しかしながら、意匠とは、物品(物品の部分を含む。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美観を起こさせるものをいうのであるから(意匠法2条1項)、外部から視覚を通じて認識できるものであることを要するものであり、また、前記のとおり、意匠保護の根拠は、当該意匠に係る物品が流通過程に置かれ取引の対象とされる場合において、取引者、需要者が当該意匠に係る物品を混同することを防止することにあると解すべきであるから、結局、当該意匠に係る物品の流通過程において取引者、需要者が外部から視覚を通じて認識することができる物品の外観のみが、意匠法の保護の対象となるものであって、流通過程において外観に現れず視覚を通じて認識することができない物品の隠れた形状は考慮することができないものというべきである(なお、控訴人主張のとおり、意匠保護の根拠が「創作」であると解したとしても、それが必ずしも意匠権侵害の判断に当たり、物品の隠れた形状をも考慮すべきであるとの見解には結びつかない筋合いである。)。
3 争点(5)(被控訴人製品における意匠の利用関係)について
 控訴人は、@他の登録意匠又はこれに類似する意匠の全部を包含すること、A他の登録意匠の特徴を破壊することなく包含すること、B他の構成要素と区別しうる態様において包含すること、という要件を満たす限り、意匠の利用関係が認められると解すべきであるところ、この観点から見ると、被控訴人製品は本件登録意匠を利用ないし包含しているといえるから、本件意匠権を侵害しているというべきである旨主張する。
 しかしながら、控訴人の主張するように、利用関係による意匠権の侵害が認められるとしても、前記認定のとおり、被控訴人製品の全体の構成態様においては、本件登録意匠の要部である前記ケーシングのモーター側端の具体的な形状(膨出部の背面視における形状全体)が外部から認識できないものであるから、被控訴人製品が本件登録意匠を利用ないし包含しているということはできない(なお、利用関係の判断においても、前記のとおり、当該意匠に係る物品の流通過程において取引者、需要者が外部から視覚を通じて認識することができない物品の隠れた形状は、考慮することができないものというべきである。)。


原審判決
事件番号  平成14年(ワ)第5556号
事件名  意匠権侵害差止等請求事件
裁判年月日  平成15年01月31日
裁判所名  東京地方裁判所
判決データ:  DE-H14-wa-5556.pdf  DE-H14-wa-5556-1.pdf





「簡易顕微鏡」特許権及び意匠権侵害事件

<1)特許法65条1項に基づく補償金、並びに、2)特許権及び意匠権の使用料相当額の損害金として、総じて、需要者に対する販売価格の10%を認定。謝罪広告の掲載請求を棄却。>

事件番号  平成18年(ワ)第22106号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判年月日  平成20年11月13日
裁判所名  東京地方裁判所 
判決データ:  DE-H18-wa-22106.pdf

第2 事案の概要等
 本件は、原告が被告らに対し、被告株式会社JAPAN CREATE(以下「被告JAPAN CREATE」という。)が製造し、被告株式会社匠(以下「被告匠」という。)が販売する、別紙被告製品目録記載1ないし3の各製品(以下、それぞれに付された番号に従って「被告製品1」などといい、被告製品1ないし3をまとめて「各被告製品」という。)につき、被告らがこれらを製造、販売する行為が、原告の有する特許権(特許番号第3806828号。発明の名称「対物レンズと試料との位置関係を逆にして拡大像を得る方法とその応用」)を直接侵害する行為であるか、あるいは、特許法101条2号、5号、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)101条4号(改正前の行為について)により、上記特許権を侵害するものとみなされると主張して、特許法100条1項、2項、106条に基づき、さらに、原告の有する意匠権(意匠番号第1171883号、意匠番号第1171884号)を侵害しているとして、意匠法37条1項、2項及び41条の準用する特許法106条に基づき、各被告製品の製造、輸入、販売及び販売のための展示の差止め、並びに各被告製品の回収及び廃棄、謝罪広告の掲載を求めるとともに、特許法65条1項に基づく補償金の支払(平成17年9月1日から平成18年5月25日までの製造、販売分)、民法709条、719条に基づく損害賠償金の支払(平成18年5月26日から平成19年11月20日までの製造、販売行為による特許権侵害分及び平成17年9月1日から平成19年11月20日までの製造、販売行為による意匠権侵害分)を求めた事案である。





「短靴」審決取消請求事件

事件番号  平成19年(行ケ)第10402号
事件名  審決取消請求事件
裁判年月日  平成20年05月28日
裁判所名  知的財産高等裁判所
判決データ:  DE-H19-Gke-10402.pdf

2 審決の要旨
(1) 審決は、本件意匠が、出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された引用意匠1〜3(その構成は下記ア〜ウのとおりである。)と類似する、又はこれらにより容易に創作し得たものであるとの請求人(原告)の主張に係る無効理由について、いずれも認められないとした。

(中略)
 そうすると、その余の差異点も含め、本件意匠と引用意匠1との差異点は、上記のとおり、両意匠の最も特徴的な部分であり、看者の注意を強く引くものであると認められる、略変形台形状の外周形状枠内を5等分して、メッシュ地よりなる同幅の略帯状凹部を5本形成し、その各略帯状凹部を略四辺形とし、つま先側に約60度で傾斜させた構成態様における共通点を凌駕するものとはいえず、両意匠が意匠全体として異なる美感を起こさせるものと認めることはできないから、両意匠は類似すると認めるのが相当である。
(5) 以上のとおり、本件意匠と引用意匠1とが類似しないとした審決の判断は誤りであり、取消事由1は理由がある。




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